ギリギリまで揉めた展示内容

撮影にこぎつけるまでもバタバタだったが、撮影後も今回の展示は中止になる危機があったと宮本さんは話す。

「撮影したものを展示が行われる東京メトロ側に見せたところ、納品締め切り前夜に23枚中7枚の展示が認められないと伝えられました。『STOP PUTIN』というプラカードを持ったもの、服の一部が赤くなったものは血しぶきを連想させるなどの理由でした。特定の政治に関するもの、不快感を与える恐れがあるといったことが認められない理由でした」(宮本さん)

バイアスをかけずウクライナの方たちのメッセージを伝えたいと思っていた宮本さんはこの判断に憤り、一度は取りやめも考えた。しかし、それも撮影に来てくれたウクライナ人の方たちの想いに反することになる。葛藤する気持ちの中で、「今大事なのは、ウクライナのことを多くの人に考えてもらうこと」という結論に至り、最終的に4月4日朝からの展示スタートを決断したという。

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「『STOP PUTIN』の部分は、とても残念ですがPUTINの部分を消して『STOP』としました。何がSTOPなのかわからない……。これではこの文字を書いた彼女の意図が伝わらないと思いました。でも、それでも彼女は展示や発信に意味があるとメッセージをくれました。写真に意図せぬ加工をするのは写真家として非常に不本意ですが、写真を見直してみれば、彼女も含め撮影された方たちの瞳や表情が想いを語っている。『遠い国の出来事』『テレビやネットで話題になっている出来事』ではなく、この戦争やウクライナ人のことを少しでも考えるきっかけになってもらえれば、と思っています」

宮本さんは、「修正を加えることになった元写真も展示とは別にぜひともみてほしい」と、修正前の写真も提供してくれた。どのような想いで彼女たちがこのメッセージ等を書いたのかも考えてみたい。

その中から3枚を最後にご紹介する。

PUTINの部分が修正ではなくなった。写真/宮本直孝 
WARの部分の色が変わった。写真/宮本直孝
血しぶきを連想させる衣装に修正が入った。写真/宮本直孝
ウクライナ人写真展『STAND WITH UKRAINE』
日時:2022年4月4日〜4月10日(日)
場所:東京メトロ表参道駅コンコース

Profile

宮本直孝(みやもと なおたか・写真左)フォトグラファー 1961年静岡県生まれ。1990年~1991年に渡伊で、オリビエーロ・トスカー二に師事。広告、雑誌等メディア媒体などで活躍。また、オープンスペースでの写真展も精力的に活動。2010年 「Fill the Cup with Hope」 WFPチャリティ写真展 、2012年 「ロンドンパラリンピック選手写真展」 、2016年 「Portraits of Refugees in Japan‐難民はここにいます。」 、2017年「母の日 – I’m a mother of a child with Down syndrome」、2019年「いい夫婦の日」、2020年「医療従事者ポートレート写真展」など。