2013年のトニー賞を総なめ

トニー賞は、例年4月末にノミネートが発表され、6月初旬から中旬に授賞式が行われる。私は俗にいうミュージカルオタク。新型コロナウイルスが世界的な感染拡大をするまでは、自主研修と称し、毎年ゴールデンウィークに、ニューヨークに観劇旅行に出かけていた。ノミネートされた作品、出演者を効率よくチェックできるからだ。13部門にノミネートされた『キンキーブーツ』は、2013年の”研修"では、真っ先に見るべき作品だった。主演男優賞の大本命に挙げられていた、ビリー・ポーターさんのローラは圧倒的だった。

2013年、オープニングでのカーテンコール。楽曲を担当したシンディ・ローパーも登壇 Photo by Getty Images
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登場シーンの観客の熱狂ぶりは今も忘れられない。本作がミュージカル初挑戦となった、シンディ・ローパーさんの楽曲は、独特のグルーヴ感があり、耳なじみがいい。劇場をあとにしてからもずっと脳内でリフレインしていた。そして、ローラが仲間のドラァグクイーンたちとともに、15cmのピンヒールを履いて歌い、踊るシーンの高揚感といったら。なかでも、工場のベルトコンベアーを使ったダンスシークエンスは、ミュージカル史上に残る名シーンのひとつだと思う。こんな劇場体験を求めて、私は劇場に通い続けているのだ。

工場のベルトコンベアーを使ったダンスシーン Photo by Getty Images

演出と振付を手掛けた、ミッチェルさんは、のちにこのシーン(「エヴリバディ・セイ・イェー」)を作るのに、半年を要したことを明かしている。そんな華やかで、質の高いショー的な要素をふんだんに含みながら、「自分とは違う、ありのままの他者を受け入れる」という作品のテーマをパワフルに伝え、観る者の心をポジティブなエネルギーで満たす。