「ローラ」というセクシャリティ

再演開幕時の囲み取材も強く印象に残っている。共演のソニンさんから初演と再演との、体づくりのアプローチの違いについて振られた三浦さんは、「洗練された体を見せたかったので、以前(初演)は筋肉質な大きなカラダを目指していたんですが、今回は"美"を追求したというか……ちょっとおかしなことなんですけど」と話している。

三浦さんから"美"という言葉が発せられると、取材陣からちょっとした笑いが漏れた。三浦さんが照れ臭そうに笑っていたからかもしれない。それでも私はかすかな違和感を覚えた。すると、三浦さんの隣にいた小池さんが、「いやおかしくない、大事なことだと思います」と返したのだ。そして、三浦さんは安心したような表情を見せ、こう続けた。「曲線をきれいに見せるためのカラダづくりをしてきたつもりです」。男性が(この場合は"男性"だが、"高齢”なども当てはまると思う)"美"を追求することは、決して揶揄すべきことじゃない。

出典/youtube Amuse公式
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なお、脚本を担当した、ファイアスタインさんは、ローラのセクシュアリティについて「ローラはドラァグクイーンなだけでゲイではない」と語っている。LGBTQであることを公表しているファイアスタインさんは、古くから、LGBTQなどマイノリティーを題材にした作品に着手してきた。鹿賀丈史さんと市村正親さんがゲイの夫婦役を務める『ラ・カージュ・オ・フォール』もファイアスタインさんが手がけた作品だ。ミュージカル『ヘアスプレー』では、ヒロインの母親であるエドナ・ターンボルド役を演じている。また、演出のジェリー・ミッチェルさんは、俳優には自分の好きなアプローチで演じるように言ってきた。俳優自身にゲイなのか、そうでないのか決めてもらうのが好きだと明かしている。

三浦さんがどのような解釈でローラを演じていたのか、もはや知るすべはないが、三浦さんがローラという役を愛し、真摯に演じていたことは、その舞台を見れば、はっきりと見て取れた。

三浦さんはブロードウェイで開幕した、2013年に、ブロードウェイでポーターさんのビリーを観て、「あのローラを演じたい!」と切望するようになったと公言していた。台湾のファンミーティングで、生まれ変わるなら男か女か問われ、「生まれ変わってもローラを演じたい」から、男がいいと答えたのも、ファンのあいだでは有名な話だ。

2013年4月4日、ブロードウェイ開幕の日のカーテンコール。プレビューが2月から行われ、すでに大評判だった Photo by Getty Images

熱心はファンとはいえない私だが、もっともっと三浦さんのローラを見たかった。それはもう叶わないけれど、三浦さんのローラは確実に存在していた。三浦さんはローラそのものだったし、凄まじいばかりの生のエネルギーをもって、ローラをいうキャラクターを生き抜いた。私たちはそのことを決して忘れない。

台湾でも大人気の三浦さん(写真は2019年)。三浦さんのたくさんの作品から、私たちは三浦さんの生きた証を愛することができる Photo by Getty Images