2022.04.19
# AI # DX

価格高騰、人手不足、食品ロス…「AIによる需要予測」が苦境の「飲食業界」を救うワケ

新型コロナウイルスによって、大きな打撃を受けた飲食業界。さらにここへきて追い打ちをかけるように、世界的な食材価格や資源・エネルギー価格の高騰による影響も懸念されている。
そこで目下、急務となっているのが、AIによる需要予測モデルの開発・導入だ。人手不足や食品ロスなどの問題解決にも寄与するというAI。シリコンバレーを拠点に活躍するAIビジネスの第一人者で、パロアルトインサイト社CEOをつとめる石角友愛氏が、飲食業界の最前線とこれからの未来について語る。

窮地に立たされている飲食業界

新型コロナウイルスの感染防止対策として打ち出された「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」による行動制限。これらの影響により、営業時間の短縮や酒類の提供制限などを余儀なくされた飲食業界への打撃は言うまでもない。

Photo by iStock

実際に先日、ある地方の飲食チェーンを営む経営者の方から「コロナで売上が一気に落ちた。特に、外国人観光客によるインバウンド需要がなくなったことにより本店は現在も休業したままだ。その間に新しいメニューの開発を考えているが、資金が足りず困っている。AIで何かできることはないか」と相談を受けたばかりだ。

東京商工リサーチの調査によると、2020年に倒産した飲食店は過去最多の842件を記録した。2021年はコロナの助成金や協力金など各種支援策が奏功し、648件(前年比23.0%減)にとどまったが、このうち半数近くの300件はコロナ関連の倒産となっており、コロナによるダメージが大きいことがうかがえる。

同時に、営業時間の短縮や酒類の提供制限などの販売条件の変化に加え、生活者の消費動向も一気に変化し、何が売れ、何が売れなくなるのか、誰しもが予測しづらい状況に陥っている。

だからこそ飲食業界ではどのような状況下においても対応できるような、AIによる需要予測モデルの開発が急務となっており、実際に飲食業界向けのAIシステムを開発する企業や、これまでのAIシステムを見直す企業が増えている。

たとえばソフトバンク株式会社と一般財団法人日本気象協会は、小売り・飲食業界向けに、人流や気象のデータを活用したAIによる需要予測サービス「サキミル」を共同開発し、2022年1月31日から提供を開始した。

また当社においてもコロナ禍にも対応できる需要予測モデルの開発・導入に関する相談は増加しており、2021年12月にはリンガーハットと共同で、緊急事態に対応する需要予測モデルの開発に着手した。

パロアルトインサイト社と緊急事態に対応する需要予測モデルを共同開発するリンガーハット/パロアルトインサイト社リリースより
 

日本のみならず、アメリカでも、2020年10月に、PwCコンサルティングが企業内のAI戦略に携わる米国の役員1032名を対象に実施した調査によると、52%の企業がコロナを理由にAI導入計画を加速させたという結果が出た。

また86%が2021年にはAIが自社で主流の技術になっていると回答していて、たとえばアメリカのペプシコ傘下にあるスナック菓子メーカー最大手のフリトレー(Frito-Lay)は、5年間かけて行うと計画していたデジタル・データドリブン化の構想をたった6カ月で行ったという事例もある。

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