付き添いは「妻」ではなくて…
「何のために生きているのかと落ち込む日々でした」
具体的には3週間を1レーンとし、6回の抗がん剤を投与するため、5ヶ月もの長きにわたり、入院することを余儀なくされ、会社を休職せざるを得なかったそうです。
しかも、コロナ禍という異常事態で啓介さんの病院では入院患者との面会は一律で禁止。啓介さんは入院中、医師、看護師など以外、誰にも会えない孤独な状態を強いられたのです。
そして11月。啓介さんはようやく退院することができましたが、そのタイミングで筆者の事務所へ相談しに訪れたのです。そして、「二度とこのような治療を受けるつもりはありません。再発したら何もしないつもりです。痛くないようにしてもらい、そのまま死にたいと思っています」と言うのです。
啓介さんの顔は血色がよくなく、わわずかな期間で激やせしたのは明らかでした。Vネックのセーターのサイズが合っておらず、何度も肩からずれ落ちそうになり、それを直そうとしていたからです。
お客様には前もって相談シートへの記入をお願いしており、そのなかには「家族構成」の欄があります。そこで、啓介さんが「妻(38歳)、長女(6歳)、長男(4歳)」と記入したことに筆者は驚きました。
なぜなら、相談の当日に付き添ったのは「妻」ではなかったからです。