チェーンストア業界が「情流」のEDI化とBMS化によって90年代には「物流」の効率化に移行したのに対して、百貨店業界は95年にJANコード標準値札が制定された後も各百貨店の独自値札が継続されて互換性が成り立たず、委託取引(00年以降は消化取引に移行)にともなう煩雑な回収〜再納品時に百貨店値札を取り替えるという手間が発生し、物流のコストと時間がかさんでいた。
著者が92年にレナウンが鳴り物入りで開設した習志野の巨大物流センター(06年にプロロジスに売却)を取材した時、百貨店から返品された商品を検品してタグを付け替え(必要なら再プレスして)再出荷するまでの気の遠くなるような人海作業とコストを知って、『この会社はいつか潰れる』と直感したのを覚えている。
そんな非生産的徒労をいまだ強いていたとは、百貨店業界は永遠の暗黒大陸と言うしかない。

委託取引伝票の笑えない悲喜劇
百貨店各社の専用伝票は委託取引時代に多くの悲喜劇をもたらした。
まずは「委託取引」と「消化取引」の違いを知って欲しい。
「委託取引」では納品された時点で商品の所有権が百貨店側に移るから、商品を他の百貨店に回すには返品伝票に百貨店担当者の捺印をもらわなければならない。
「消化取引」なら商品の所有権は販売が成立した時点で百貨店側に移るから、売れる前なら納入業者の意思で(百貨店担当者の捺印不要)引き取って他の百貨店に回せる。