2022.04.13

百貨店が「高い」のはなぜ…? プロが明かす「不都合な真実」と「変わる現場」

百貨店が、ようやく目覚めてきた
小島 健輔 プロフィール

「情流」「物流」「商流」の逆行悲劇

話はBMSとEDIに戻るが、どちらも「情流」であって、それが整わないと「物流」も効率化できないが、それ以前にすべてを左右するのが「商流」だ。「商流」が非効率なまま、「情流」や「物流」に設備投資しても見返りは期待できない。

前述したレナウンの「習志野インテリジェント・ジャンクション」は不合理な「商流」と噛み合わない「情流」のまま、延べ床面積10万9000平米に自動ハンガー搬送システムなど省力マテハン機器やトレーニングジム、東京湾一望のレストランなど400億円を注ぎ込んだが、業績の下降で稼働率は低下の一途を辿り、06年の売却に至った。ほとんど戦艦大和みたいな愚行だが、似た様な話は近年も頻発している。

 

ユニクロは18年10月、ダイフクと組んで有明にロボットピッキングシステムを装備した巨大自動化倉庫を開設したが、「入庫生産性80倍、出庫生産性19倍、保管効率3倍、ピッキング作業者の歩行数0歩、RFID自動検品精度100%」を実現しても、店舗物流とEC物流を分離してしまうというOMO(店舗とネットの一体化)に逆行する戦略ミスが指摘される。

前後してグローバルSPAのライバル、INDITEX(ZARA主体)は各国のEC出荷倉庫を順次全廃して店舗在庫引き当てによるローカル店出荷・店受け取り体制に切り替えると決断しており(21年末までに完了した)、22年1月期EC売上が75億ユーロ(約9780億円/EC比率27.0%)に達して24年には30%への到達を見込む一方、店舗軸OMOへの決断が遅れた国内ユニクロの21年8月期EC売上は1269億円(EC比率15.1%)に留まったことを見ても戦略ミスは明白だ。

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