賛否両論のウィル・スミス「平手打ち事件」、そこに至るまでの歴史と文脈を徹底検証する

池城 美菜子 プロフィール

クリス・ロックとは何者か

アメリカのポップ・カルチャーの事象で日本へ伝えづらいのは、オプラ・ウィンフリーのようなメディアを牛耳っている大物司会者と、クリス・ロックのような大物コメディアンの影響力の大きさかもしれない。

超一流のコメディアンは日本の大物芸人と似ている面もあるが、活動の仕方でちがいがある。アメリカでトップに上りつめたコメディアンは、人気ミュージシャンや俳優を凌ぐほど稼ぐ、「household name(ハウスホールド・ネーム=誰でも知っている存在)」である。

勝ち上がり方の王道は、ひとりでしゃべるスタンダップ・コメディから出発し、『サタデー・ナイト・ライヴ』といったコメディ番組のレギュラーになったり、レイト・ショーと呼ばれるトーク・ショーの司会を任されたり、俳優業を兼任したりするパターンがある。

クリス・ロックはこのすべてに当てはまる。ただし、トーク・ショーは特別契約が必要なケーブル局HBOでの放映だが。地上波キー局のレイト・ショーの司会はずっと白人男性で占められており、その牙城はなかなか崩れない。

〔PHOTO〕gettyimages
 

クリス・ロックはローリング・ストーン誌の「歴代でおもしろいコメディアン」ランキングで5位に選ばれている。鋭い毒舌が売りで、家族ネタなど身近な笑いから社会的なコメンタリーもできる知性派だ。

現在、おもにホテルに併設されているシアターを回る「Ego Death」ツアーの最中で、チケットサイトを覗いたところほぼ完売。残っている席は500ドル(約6万円)以上の値段がついていた。

7月にはやはり人気コメディアンのケヴィン・ハートとマディソン・スクエア・ガーデンほかアリーナ級の会場に8日間ほど登場する予定で、こちらも半分がソールドアウトになっている。

米フォーブス誌によると、ネットフリックスとの単独契約で近年でもっとも稼いだ2017年の資産額は5700万ドル(同年の円相場で換算すると約66億円)でこの年のセレブリティ・ランキングで30位だ。ウィル・スミスも同ランキングに2020年に入っていて、こちらは4400万ドル(同様の換算方法で48億円)で69位とあった。

ギャラの高さや資産で人の価値はもちろん測れないが、国民的スターとしてのステータスを伝える目安にはなると考えて引用した。ふたりともとてつもない経済効果をもたらしていること、ロックがスミスより「ずっと小者」では決してないことは強調したい。

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