賛否両論のウィル・スミス「平手打ち事件」、そこに至るまでの歴史と文脈を徹底検証する

池城 美菜子 プロフィール

スミス家の人々

ジェイダ・ピンケットは結婚前から人気の俳優だ。人種ごとにわけてテレビ番組や映画が制作されることが多かった90年代、ブラック・ムーヴィーで主役を張っていた。

ラヴ・ストーリー以外にも、アカデミー賞の会場にいたクィーン・ラティーファも出演していた『Set It Off』(1996)など、生きづらさから銀行強盗を働く4人の女性の話など社会的なメッセージを含んだエンタメ作品でも主役を務めている。

日本でもっとも有名なのは『マトリックス』シリーズのナイオビ役だろう。伝説のラッパー、2パック・シャクールの高校時代からの親友としても知られている。彼女はロック・バンド、ウィッキド・ウィズダムのボーカルでもあり、オジー・オズボーン主催のオジー・フェスに出演もしている。

ウィルとジェイダの関係は濃厚で、複雑である。ウィルにとっては再婚であり、前妻のシェリー・ザンピオとの間に長男のトレイがいる。若くして結婚したウィルが、1995年に離婚してあまり時間を置かずに再婚したのがジェイダだ。最近アメリカでよく耳にする「ブレンデッド・ファミリー(折衷型家族)」であり、クリスマス休暇などは全員で過ごす。

ジェイダとの間の第一子が現在23歳のジェイデンであり、『幸せのちから』(2006)や『ベスト・キッド』(2010)の子役として覚えている人も多いだろう。ミュージシャン、ファッション・デザイナー/アイコンであり、とくに女性ものの服も着こなすアンドロジニアス(中性的な)スタイルで有名だ。

妹のウィローは20才だが、ミュージシャンとしてのデビューは2011年、9才のときに「Whip My Hair」を大ヒットさせている。昨年、4作目『lately I feel EVERYTHING』で大きくポップ・パンクにふり切って話題になった彼女は、2019年にバイ・セクシュアルであることを公言してもいる。

〔PHOTO〕gettyimages
 

ウィル・スミスは1998年に長年の知り合い、ジェームズ・ラシターとプロダクション・カンパニーのオーバーブルック・エンターテイメントを設立、自身の主演作など多くを製作している。

ジェイダも深く関わっていたが、2019年にはジェイダとほかふたりとマルチメディア会社、ウェストブルック・インクを新たに立てて、オーバーブルックを吸収している。つまり、ふたりは夫婦であると同時にビジネス・パートナーなのだ。

ジェイダが近年、力を入れているのがフェイスブック・ウォッチのオリジナル・プログラム『レッド・テーブル・トーク』である。テレビやネットフリックスのトーク番組よりはこぢんまりしているが、フェイスブックを開ければすぐに見られる手軽さはYouTubeに近く、人気の回は5000万回ほど再生されている。

スミス家をつぶさに調べて驚くのはその関係性の濃さだ。今回の事件で、数年前の別居中に起きたジェイダと20才年下のR&Bシンガー、オーガスト・アルシーナの恋愛が取り沙汰されたが、その件についてウィルとジェイダが13分弱向かい合って話している様子が公開されている。

当時、離婚寸前であったのを認めつつ、言ってもいない発言がニュースの見出しに出ることと、くり返し打ち消しても出てくるオープン・マリッジ(婚姻関係にある以外のパートナーを認める結婚)の噂に心底うんざりしていると語っている。

スミス夫妻はセラピーと話し合いの重要性を説いてきたカップルであり、ここでの会話を聞けば、ふたりが非常に聡明で話者としてもよく訓練されたプロであるのがすぐにわかる。

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