伝統的な「斬新なコンセプトの料理番組」枠
しかし、この番組が好感を持って受け入れられているその背景には「巧みな演出意図」や「番組枠の事情」が潜んでいることに筆者は気づかされた。
どういうことかというと、この番組は「高度の計算の元に設計された料理番組を超えた料理番組」であると言えるのだ。

まず、この枠は代々「斬新なコンセプトの料理番組」を輩出してきたことに注目しなければならない。かつて、1980年代から1990年代半ばにかけて放送された『金子信雄の楽しい夕食』は、料理上手な俳優の金子信雄さんがその腕前を披露するものだった。
ただ、酒好きな金子信雄さんはだいたい料理を作りながらガンガン酒を飲んでいたので、料理が出来上がる頃には結構「ご機嫌」になっていた。しかも、きっと数日分をまとめて撮影するからなのだろう、日によっては番組冒頭からベロンベロンで、呂律が回っていないこともままあった。
そして、90年代半ばから今年3月まで、実に四半世紀以上続いてきた『上沼恵美子のおしゃべりクッキング』では、「メインMCは一切料理をしない」というこれまた革新的なコンセプトだった。
言ってみれば『上沼恵美子のおしゃべり』と「クッキング(をする辻調理師専門学校の先生)」の2つに番組タイトルが分割できる状態で、上沼さんはひたすら、調理をする男性の先生を、時には愛を込めて、時には意地悪な感じでひたすらいじるだけ。
考えると、この時の「MCは見学者スタイル」をDAIGOはある意味踏襲しているのかもしれない。
タイトルを分割すると、「DAIGOも台所(にとりあえずいる)」「きょうの献立何にする?(かを頑張って考えて作る辻調理師専門学校の先生)」という感じの仕上がりの番組になっている。これはかなりシュールだ。