オッサン化か、女性を武器にするか…女性記者が迫られる選択

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「全国紙で初めての女性政治部長」として第一線で活躍してきた毎日新聞の佐藤千矢子さん。男性社会である新聞社の政治部で、彼女が経験したさまざまな理不尽を振り返り、男性優位社会に対する提言を行ったのが、現代新書の最新刊『オッサンの壁』です。
今回は、そんな同書から、オッサン社会での女性記者の生存戦略について語ったパートをお届けします。

純粋培養されるオッサン

新聞社や、私の取材先である政界、官界にはオッサンが多い。単に男性の数が圧倒的に多いというだけではない。家には家庭を守る妻がいて「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という性別役割分担の意識がしみついている人が多かったし、今でもそういう意識の人は少なくない。それを支える経済力があるということが、要因として大きいように思う。特に、私が若手・中堅の政治記者だった1990年代は、政治家の妻はもちろんだが、先輩記者や官僚たちの妻には専業主婦が多く、男性たちはその妻に家庭をまかせて、ひたすら仕事に打ち込んでいた。

新聞社の中でも政治部が特殊な職場だと思うのは、永田町と霞が関が主な取材の現場だという点だ。その狭いエリアに、政治家、その秘書、官僚らが働き、膨大な情報を扱い、国の重要な政策決定をしている。衆参両院の国会議員約710人をはじめ、議員秘書、国会事務局職員、政党職員など永田町関係者だけでも約7000人が動いている計算だ。政治部の記者はそれを朝から晩まで取材する。もちろん企画取材や調査報道で、政治部の記者もいろんな取材現場に行くが、日常的な取材の場となると、やはり永田町と霞が関になる。だから、取材相手も比較的、経済的に恵まれた人たちが多くなる。男性優位がデフォルトになっているオッサン社会に疑問を感じる必要性が生じにくい。オッサンが純粋培養される土壌がある。政治部が典型的なオッサン社会と思うのはそのためだ。

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オッサンは、外野の女性が文句を言っても、適当に話をあわせるだけで、本当の意味では耳を傾けようとしない。せっかく政治部に来たのだし、それならば、これぞオッサン社会という政治部でとことんやって、耳を傾けさせる存在になろうと思っていた。

女性みんながオッサンの壁を乗り越えるために、オッサンと同じような働き方をする必要はない。むしろ、そんなことはすべきではない。そんな考え方は今ではナンセンスだし、当時だっておかしい。人それぞれにあった柔軟な働き方が認められるべきだ。けれども、当時の私は、女性の誰かが一度同じようにやってみせなければ、この壁は本当には乗り越えられないんじゃないかと思っていた。今から考えると、なんて気負っていたのかと、若いころの自分を不憫ふびんに思うが、当時はそう思い込むほど、オッサンの壁は厚かった。

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