2019年度の司法統計(最高裁判所)をひもとくと、離婚原因は男女とも「性格の不一致」が第1位だ(男性9,958 件、女性17,242件)。
2位以下になると男女で理由は異なる。女性のデータを見ると、2位「生活費を渡さない」(12,943件)、3位「精神的に虐待する」(11,094件)、4位「暴力を振るう」(9,039件)と続く。
今回のテーマは「精神的に虐待する」といういわゆるモラハラだ。上記データの、3位と4位は夫から妻へ暴力であり、この2つの件数を足すと、20,133件になり、離婚原因の1位「性格の不一致」よりも2891件も多いことに注目してしまう。

キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さんは「モラハラの相談、そしてそのはけ口としての浮気は多いです」と語る。彼女は離婚調査に定評がある「リッツ横浜探偵社」の代表だ。「モラハラは夫に自覚がなく、“妻のためを思って”の言動であることが多い。夫は加害者だと思っていないので、妻は逃げ場をなくし、浮気相手にハマっていくのです」と続ける。この連載は、調査だけでなく、調査後の依頼者のケアまで行う山村氏が見た、現代家族の肖像でもある。

山村佳子
私立探偵、夫婦カウンセラー、探偵。JADP認定 メンタル心理アドバイザー JADP認定 夫婦カウンセラー。神奈川県横浜市で生まれ育つ。フェリス女学院大学在学中から、探偵の仕事を開始。卒業後は化粧品メーカーなどに勤務。2013年に5年間の修行を経て、リッツ横浜探偵社を設立。豊富な調査とカウンセリングを持つ女性探偵として注目を集める。テレビやWEB連載など様々なメディアで活躍している。
リッツ横浜探偵社:https://ritztantei.com/
山村佳子さん連載「探偵が見た家族の肖像」今までの記事はこちら
 

結婚10年、高学歴イケメン40代夫からの相談

今回の依頼者は男性です。泰弘さん(仮名・45歳)は、輸送関連会社に勤務する会社員です。要職に就いており、BtoB向けの講演会では講師を務めているほどの専門家。地政学などにも詳しく、国内と海外の2つの難関大学を卒業しています。

そんな泰弘さんが「迷った末に電話しています。私はどうすればいいのでしょうか」と私たちに電話をくださいました。迷いと言うのは、妻(40歳)のこと。
「妻とは結婚10年ですが、最近、妻の異変に気づきました」

具体的にどのような異変なのかを伺うと、「いろいろと、家庭内に行き届かないことが増えまして……」と言葉を濁している。そこで、対面してお話を伺うことにしたのです。

泰弘さんは鍛えられた肉体と、整った顔の持ち主で、見た目は30代半ばに見えます。私が感嘆していることを察知したのでしょう。「あ、僕、ちょっと若く見えますよね。見られることも多いので、自己管理は徹底しています。体型維持と健康には気を遣っている方だと思います」と言います。

Photo by iStock

妻の様子について伺いました。

「1年ほど前から、家のことが行き届かなくなったのです。シャツをクリーニングに出し忘れる、僕の実家の大切な行事にドタキャンするなどは日常茶飯事です。妻は働かなくてもいいほど生活費を渡しているのに、仕事を続けています。まあ、誰でもできるような仕事ですよ。家の管理が思うようにいかないのは、仕事をしているからだと思い“仕事が大変なら辞めて家のことに専念したらどうか”と言っても、何も言わないんです」