ゆめめ 心が疲れるのを避けたいという話で言うと、稲田さんが昨年12月に書いた記事で、青山学院大学の学生にリサーチしたもの(「なるべく感情を使いたくない」映画やドラマを『倍速視聴』する大学生の本音)があったじゃないですか。あそこで「心が揺さぶられるのが嫌だから、泣く映画かどうか先に知ってから観たい」っていう人がいましたよね。
稲田 ええ。同じような理由で先にネタバレサイトを読んだり、結末を人に聞いてから映画を観る人は他にもいました。先に結論を知っておいたほうが、ドギマギしなくていいんだと。これには驚きましたね。
ゆめめ これ、私自身もそうですし、以前「ワカモノのトリセツ」でも分析しました。ライブなら、先にセットリストを知っておけば「あの曲なんだっけ」とならないで済むし、プレゼントは事前に欲しい物を相手に聞いておいたほうが失望されない。サプライズ誕生パーティーもNG。私もそうですけど、Z世代は先のわからないことや想定外の出来事が起きて気持ちがアップダウンすることを、“ストレス”と捉える傾向が強いので。Z世代は「体験」より「追体験」を求めるんです。
稲田 でも多かれ少なかれ、作品にせよ体験にせよ、事前に予想していなかった感情が湧き起こるのが、むしろ醍醐味じゃないですか?
ゆめめ それもわかるんですけど、やっぱり「自分の感情をコントロールをすること」がとても大事だという感覚が、自分も同世代の周囲の人にも、すごく強いんだと思います。
稲田 自分の感情は完全に自分の制御下に置いておきたい。常に“アンダーコントロール”の状態にしておきたい。外部要因によって気分を左右されたくないと。しかし、前編の「大学生が社会人みたいに忙しい」も、この感情コントロール志向もそうですけど、大学生のうちからかなり「大人」にならなきゃいけない時代になっているんですね。この4月から成人年齢が18歳に引き下げられましたが、その意味でも18歳はもう「子供」じゃないと。