さらに注目すべきは、佐々木が今季登板した3試合で記録した「奪三振割合(K%)」だ。23回を投げて77人と対戦して42三振を奪い、54・5%。これは、驚異的な数字だ。
「シーズン通しての数字なので単純な比較はできませんが、江夏豊が'68年に401奪三振という空前絶後のプロ野球記録を樹立した時のK%が31・9%で、この数字は53年間破られていない。このままいけば、佐々木が大幅に塗り替える可能性もあります」(野球データに精通するブロガーの竹下弘道氏)
高校時代から160km台を投げ、すでに飛び抜けた逸材であることはわかっていた。しかし、「野球エリート」がしのぎを削るプロ野球の世界で、これほど異次元の力を見せつける佐々木の肉体には、一体どんな秘密が隠されているのだろうか。
「彼が抜群に優れているのは骨格のバランスです」と語るのは、ロッテとコンディショニング面などのアドバイザリー契約を結び、佐々木を間近で見てきた廣戸聡一氏だ。
「ベストの球を投げるには、足首、股関節、腰、肩、腕と全身の関節を総動員して『正しい動き』をする必要がある。その点、佐々木投手は全身の骨格が歯車のように連動しています。身体のポテンシャルを最大限活かし、無理なくしなやかに動けているからこそ、細身の身体であれだけの球が投げられるのです」
全てを兼ね備えた肉体
そして、もう一つ特筆に値する身体能力が、胸を張って投げる力だ。
「ボールを離す時、上体を突っ込ませずにピタッと止めると、体幹が支点となって上半身と腕の大きなしなりが生まれます。彼は高校時代からこのしなりを作るのが上手だった。
加えて昨季以降は下半身を徹底強化し、足を土台として上体をよりがっちり支えられるようになった。これが、今季160km以上の球を抜群のコントロールで投げられている理由でしょう」(野球動作解析の第一人者で筑波大学准教授の川村卓氏)