これを裏付けるのが以下の写真だ。'21年と'22年の佐々木の投球動作をほぼ同じタイミングで捉えたものだが、'21年は上体がやや前に倒れているのに比べ、'22年は胸が後ろに残り、背筋が伸びて弓なりの形になっていることがわかる。

くわえて川村氏は、佐々木がボールをリリースする際の、指先の使い方の巧さに着目する。
「140km後半を投げる投手と、150km後半の投手を比べても、全身の動作にはさほど大きな差はありません。決定的な差を生むのは、指先の使い方。リリースの瞬間に、人差し指と中指がボールにしっかりかけられるかどうかによって5~10kmの差が生まれてくる。
その点、佐々木投手は指で回転をかけるタイミングが絶妙で、まるでバレーボールのスパイクのように球にダメ押しの回転がかかる。あれだけの高さから投げ下ろしながらストライクゾーン低めに決まるのも、指先を上手くかぶせているからです」
佐々木の写真を見ると、リリース直後の指が大きく前に曲がっていることがわかるだろう。これこそ、いかにボールに指をかけて投じているかの証左だ。
「足の使い方、腰と肩の連動、腕の振りの速さ、そして指先の使い方。彼のように、全てを高次元に兼ね備えた選手を見るのは初めてです」(川村氏)