2022.04.21

プーチンがほくそ笑んだ…ロシア兵を「鬼畜」に変えた、戦争の狂気と冷酷な「心理作戦」

週刊現代 プロフィール

ミルグラム教授のイエール大学の研究室に、新聞広告に応募した何も知らない男性被験者が集められた。「懲罰学習の効果を測る」と説明された彼らは「教師」と「生徒」役に分かれ(実は生徒役はサクラの俳優)、教師役の被験者は教授の指示に従って生徒役に電気ショックをかけるのだ。

防衛大学校教授・河野仁氏の説明を聞こう。

「実験では、ミルグラム教授の指示に従い、次第に電流を高圧にしていきました(生徒役の俳優が電流を流された演技をする)。

生徒役が次第にひどくもだえ苦しみ、やめてくれ!と叫ぶのを目にしても、教授が『責任は我々がとります』『続行してください』と言うと、なんと40人の被験者のうち26人が、死の危険がある最大電圧まで電流を上げたのです。彼らはさまざまな経歴を持った、ごく普通の市民でした。

この実験で正当な権威を持った人の命令であれば、非人道的な行為でも、人間は命令に従ってしまうことがわかりました。しかも、真面目な人ほど従ってしまうのです。

兵士としての役目を真面目に果たそうとすればするほど、残虐行為に手を染めてしまうこともありうるということです」

本当の惨劇はこれから

米国防総省によると現在、ウクライナの戦場には、約19万人のロシア兵が投入され、3万人近くが死傷したとみられている。損耗率は15~20%に迫り、ロシア側の犠牲も決して少なくない。

 

元自衛官で、傭兵として世界各国の紛争を経験した高部正樹氏は言う。

「ボスニアで経験したことですが、相手側の勢力範囲に進出した時、民兵がいると、周囲すべてが敵に見えるのです。女性だろうが短パン姿の少年だろうが、敵かもしれないと疑い、私服の民間人に銃を向けそうになる。

そんな自分に非常な罪悪感を抱き、ストレスがたまります。すると妄想的な症状が出て“俺たちは敵に囲まれているのではないか”という強迫観念に苛まれるようになっていきました」

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