2022.04.21

プーチンがほくそ笑んだ…ロシア兵を「鬼畜」に変えた、戦争の狂気と冷酷な「心理作戦」

週刊現代 プロフィール

最初は「民衆の中から敵を見つけよう」と思っていたのが、「こいつも敵かもしれない」と疑心暗鬼になり、ついには「みんな敵なんだから排除してしまえばいい。そうすれば自分たちが安全になる」と思い詰めるようになった者もいたという。余語氏が言う。

「軍隊では軍規が絶対です。しかし激戦地のマリウポリなどでは、現場の小隊あるいは一兵卒の独断でマニュアルにない肉弾戦が展開されているでしょう。

ロシア軍はすでに6000件もの戦争犯罪をしたと認定されています。つまり今のロシア軍は何の躊躇もなくいくらでも残虐な戦闘を行う集団になってしまっている。とらえられた兵士や民間人が生きたまま手足を切断されたりしていても不思議ではありません。もはやロシア軍は一国の軍隊として敬意を持つ相手ではありません」

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気がかりなことは他にもある。グロスマン氏の著書『戦争における「人殺し」の心理学』には、兵士のストレスがどのような経過をたどるか、という研究が記されている。

それによれば、普通の兵士は開始から10日が過ぎた頃から戦場慣れし、能力を発揮するが、30日を過ぎると疲労困憊となり、40日が過ぎると無気力になっていくという。グロスマン氏は言う。

「ある軍人は私にこう語りました。世界の大半は羊だ。優しく従順で攻撃的になることができない。だが自分は羊の群れを統率する犬だ。忠実で、狼に向かっては十分に攻撃的にもなれる、と」

ロシア軍の98%の兵士は、現在「こんなことには耐えられない」と思うようになっているはずだ。

しかし2%の者たちは、敵を狼と見なして容赦なく狩り、頭目であるプーチンの命令一下、羊までも皆殺しにして省みない残忍性を増していく。

侵攻から7週間が過ぎたこれからが惨劇の本番だ。それが戦争の恐るべき現実なのである。

『週刊現代』2022年4月23日号より

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