円安スパイラルの阻止が緊急の課題
すでに述べたように、急激な円安が進行しているのは、日銀が長期金利抑制の姿勢を強く打ち出しているからだ。このため、円安が円安を呼ぶというスパイラル現象が起きつつある。
しかし、金利抑制策は、日本経済に何のメリットも与えていない。むしろ、金融機関の経営を圧迫するなどネガティブな影響が強い。
こうした政策から一刻も早く脱却して、円安スパイラルを食い止めることが必要だ。日銀が通貨価値安定という中央銀行本来の使命に戻り、金利抑制策からの転換を明言すれば、事態は大きく変るだろう。
ただし、口先介入だけでは不十分かもしれず、為替市場への介入が必要とされるかもしれない。
為替介入には、アメリカに承諾を求める必要があるという意見があるが、自国通貨の価値を守るための介入に外国の許しが必要という考えは理解できない。
ただし、円高に向けての介入が容易でないことは事実だ。これまで行ってきたのは、円安誘導の介入だ。円を売ってドルを買うのは、簡単にできる(政府短期証券を発行して調達した円資金を用いて、為替市場でドルを買い入れる)。2000年頃には、総額35兆円を超える大規模な円売りドル買いの介入が行なわれた。
それに対して、円高介入は、外貨準備の範囲内でしかできない。だから、限度がある(2021年9月末における日本の外貨準備高は1.4兆ドル)。