2022.04.23

「まるでホテル」な高級老人ホームは幸せと言い切れる? ある現場で働く介護士たちの「生の声」

「老いと幸せ」を考える
宇多川 ちひろ プロフィール

ただし施設では、例え認知症になったとしても退去を勧めたりすることはありませんでした。そのような場合は医師の診断、判断の元、本人の心的な負担などを考慮し、心を落ち着ける薬を内服して頂いておりました。と言えば言葉は綺麗ですが、薬によって行動を落ち着けるしかありませんでした。何よりも周りの方達に対しての配慮の面も大きいと思います。

新しい薬の服用を始め、半年程でマキノさんは冷静さを取り戻されて、落ち着かれた日常を送る様になりました。御付きの方が定期的に部屋を訪れ、以前の整理整頓され尽くした状態を今も保ち続けています。しかし、凛として職員の所作に対して的確な指摘をするマキノさんの姿はその部屋にはありません。

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居室に伺い、マキノさんに今日の予定を問い掛けますが、返事はありません。本人の意図を汲んだ職員が、車椅子に座り、宙を眺めるマキノさんの後ろを押して散歩をしたり、一緒にテレビを見たりしています。

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みなさんはこの事例をどのように感じられましたか。高級老人ホームに入居しさえすれば「幸せ」と言い切ることはできるのでしょうか。答えは人それぞれだと思いますが、私たち介護士は日々こうしたリアルに直面しているのです。

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