2003年から連載され、全19巻のコミックの販売部数は累計1400万部を超えているCLAMPさんの人気作『xxxHOLiC』。人間界とアヤカシの世界をつなぐ規模の大きな作品ゆえ、実写は不可能ではないかと思われていたが、蜷川実花監督により実写映画が完成した。
主演の神木隆之介さん、柴咲コウさん、をはじめ、松村北斗さん、玉城ティナさん、磯村勇斗さん、吉岡美帆さんら豪華なキャストと、蜷川さんのビジュアル世界が話題の作品だ。
蜷川監督にジャーナリストのなかのかおりさんがインタビューさせていただいた記事の前編「1400万部の漫画を映画化『ホリック xxxHOLiC』蜷川実花監督が語る、キャストへの想い」では、映画化したいと思った理由や、キャストを決めるときの話を伺った。後編では、コロナ禍の撮影で考えたこと、映画で伝えたかったメッセージについて紹介する。

人の心の闇に寄り憑く“アヤカシ”が視える孤独な高校生・四月一日(わたぬき・神木隆之介)。その能力を捨て普通の生活を送りたいと願う四月一日は、ある日、一羽の蝶に導かれ、不思議な【ミセ】にたどり着く。彼の願いを叶える対価として、“いちばん大切なもの”を差し出すよう囁く女主人・侑子(柴咲コウ)。同級生の百目鬼(松村北斗)やひまわり(玉城ティナ)と出会い、“大切なもの”を探す四月一日に、“アヤカシ”の魔の手が迫る。
自立だけでなく、「許し」を描いた
筆者は、「xxxHOLiC」に初めて触れた立場で映画を見て、斬新なビジュアルのダークファンタジーでありながら、温かい気持ちになるという不思議な体験をした。
「だんだん、そのように変わっていったところはあります。今回は子どもたちに見せたいという思いが強いん です。自立していくことの背中を押せたらいいなとか、自分で決めて考えられる大人になってほしいなとか、これらのテーマは今までの作品『さくらん』や『ヘルタースケルター』でも共通しています。ただ今回は、『許す 』ということも大事だなと思ったんです。
例えば、最後に闘うアヤカシをやっつけて終わるのではなく、共存というか、どういう風にすみ分けていくかが、今の世の中に大事なことなんじゃないかと。人間側からの視点だけではなくて、アヤカシ側や中立の立場のアカグモとか、いろんな視点が入ったラストになったらいいなと思いました」
