漫画家で小説家の折原みとさんは、『アナトゥール星伝』『時の輝き』『天使のいる場所~Dr.ぴよこの研修ノート』『真夜中を駆け抜ける』など、多くの作品を世に出してきた。
その一方、八ヶ岳でドッグカフェを経営して失敗したり、その失敗を生かして茨城で古民家再生に挑戦したりと、「その土地」を生かした店づくりや古民家リノベーションも手掛けてきたかなりアクティブな漫画家なのだ。
そんな折原さんが横須賀を舞台に小説を書こうと横須賀を訪れる中で出会ったのが、横須賀市の「アーティスト村創出事業」だ。約2200平米の市営住宅跡地を、アーティストの居住地域とし、コミュニティスペースとしても生まれ変わらせる計画だという。折原みとさんは2019年にそのアーティストのひとりに選ばれ、リノベーションから戸建ての市営住宅をよみがえらせることに……。
住み替えなどで不要になった家具をもらいうけるなどして準備万端、ここから施工というときに襲い掛かってきたのが、コロナの感染拡大という現実だった。
横須賀ダッシュ村計画最終回の3回目は、そこから完成形に行くまでと、2022年の今までをお届けする。
横須賀ダッシュ村計画#2 「床が抜けた家で…高齢者の「捨てるお宝」ザクザク!横須賀「SDGs村」の作り方」はこちら
建物改修工事は緊急事態宣言で延期に
2020年(令和2年)春、世界中を襲った未曾有の感染症。
着々と進んでいた横須賀市の「アーティスト村プロジェクト」も、その影響を受けずにはいられなかった。
5月頃からとりかかるはずだった建物の改修工事が、緊急事態宣言の発出により延期になってしまったのだ。
あの頃は、学校は休校、会社はリモート推奨。飲食店もデパートも休業で、社会全体がほぼ機能停止していたのだから仕方ない。
何もできないまま、じっと待つこと1ヵ月半以上。
その後、工事に取りかかることができたのは、夏になってからのことだった。
まずは、ボロボロになった床や建具、壁を取りはらい、トイレや浴室も撤去して、建物内部をスケルトンの状態に。
それから、私がリクエストした間取り図を参考に、新たににキッチンやトイレをレイアウトしていただいた。
もともとは2戸分の住宅だったところを、間の壁に開口部を開けて、一戸2部屋として使えるように。
2Kの間取りだった部屋をブチ抜いてワンルームにしたので、各部屋は25畳ほどと、かなり広々としている。