かさむ電気代、悪臭、エレベーターの待ち時間…
近くにこのタワマン以外、高い建物がないので抜け感があるという点も決めた理由のひとつだったが、眺望にはすぐに飽きてしまった。それどころか、全面ガラス張りの部屋は陽射しが強烈でまさに温室状態。晴れた日はエアコンをつけないといられず、思った以上に電気代がかさむ。まぁカーテンを引けばいいのかもしれないが、だったらなんのための眺望なのかと思ってしまう。
また智子さんは料理好きだが、IH調理器の火力が弱く料理のレパートリーが減ったと嘆いている。特に中華料理などの炒め物が美味しくできないという。当初は、オール電化はガス代の節約にもなるし、火事も発生しにくく良いなと思っていたのだが、使用できる調理器具もIH対応に限られてしまう。それに、スーパーなどで激安フライパンを見つけても対応しておらず使えないという。ガスコンロより調理に手応えを感じず、「ガスコンロだった前のわが家が懐かしいわ」とことあるごとに言う始末である。

そのうえ、智子さんからすると、落下防止などの理由から、ベランダの手すりに洗濯物や布団などが干せないのも気になるという。当初は、憧れの浴室乾燥機にドラム式洗濯機もあるから大丈夫と思っていたが、やはり天気がいい日はシーツとかお日様にあてて干したいと嘆く。それに物干し用の金具の位置も決まっていて、干せる丈が限られたり腰にも負担があるという。
さらに最近になって、部屋でドブや吐しゃ物のような悪臭がするようになった。特に風呂場や、洗濯機置き場がひどく、臭すぎて寝られない時もある。管理会社に聞いたところ、いま理事会で初めての雑排水管清掃について検討中だという。
一般的に築2年を超えたあたりから、定期的に雑排水管清掃を実施するそうだが、せっかく管理組合で実施することになっても不在などで清掃を受けていない部屋や、人が一定期間住んでいない部屋では排水溝から逆流し、臭いがするそうだ。またこのタワマンは、ホテルのような内廊下の構造のため、一定の換気をしていても、臭いがこもってしまうことも原因のひとつだという。それに内廊下は高級感があり素敵だと思っていたが、絨毯は水洗いの掃除がしづらくホコリや臭いのもとになってしまうケースもあるという。
しかも物件選びの条件にしていた、エレベーターの待ち時間でイライラすることもある。朝の5分は当たり前、ひどい時は10分近く待たなければならないこともある。もし川崎・武蔵小杉のタワマンのようにエレベーターが止まったら(2019年10月の台風による浸水被害で長期間電源が止まった影響)、階段で昇り降りできる自信はなく、いまさらながら高層階にしたことを後悔している。
その他にも、宅配ボックスが1階にしかなく重い荷物を部屋まで運ぶ時、非接触キーをいたるところでかざすのがとても大変である。それに、強風が吹いたり地震があったりすると「長周期地震動」によって大きく揺れ、智子さんのほうがひどいのだが、乗り物酔いのような症状になる。それに頑丈で壁が厚いと思っていたのに、子供の泣き声、水が流れる音、ドアの開閉音など生活音が気になることもある。