「すこしだけ優しい自分」に出会う切符を手に

『ちはやふる百人一首勉強ノート』発売記念
今冬発売のコミックス第50巻で完結することが発表された人気マンガ『ちはやふる』。それに先立ち、作者の末次由紀さんが百人一首の名歌について学び、アイデアを膨らませるために作成した創作ノートが単行本として発売されました。その名も『ちはやふる百人一首勉強ノート』。今回は、古典文学に造詣が深い編集者の「たられば」さん(@tarareba722)に、本書の読みどころをお書きいただきました。

『ちはやふる』(末次由紀著)という、2007年から15年間続いている大傑作がいま、クライマックスを迎えております。

本稿を読まれる方の中には未読者はほとんどいないと思いますが(いまから初読を迎えられるなんてなんとラッキーな!!! 40巻がお薦めです!!!!)、『ちはやふる』は、主題となっている「競技かるた」の心・技・体における魅力だけでなく、高校部活動に打ち込む若者たちの青春と努力の物語であり、さらに小倉百人一首の「和歌の深さと美しさ」を存分に引き出す作品でもあります。

「読んでためになる」というだけでなく、エンターテイメントとして非常に優れていて、読み出したらページをめくる手が止まらない。そんな作品が、(小学校六年生だった主人公たちが高校三年生となり、競技かるたの最高峰である「名人位・クイーン位戦」に挑むという)いよいよ最終盤を迎えているわけです。

そんな、極上のジェットコースター体験もそろそろ終点が見えてきて、一抹のさみしさを抱えていたファンに、素敵なプレゼントが届きました。それが本稿で紹介する『ちはやふる 百人一首勉強ノート』であります。

「切符」のバトンが平安と令和をつなぐ

「百人一首は……定家から「大事なことをひとつだけ教えてあげる」と手渡された切符のようだ」。

今回紹介する『ちはやふる百人一首勉強ノート』の冒頭(「はじめに」の直後)に書かれた、本書の作者・末次由紀先生のフレーズです。

「和歌で綴った平安朝歴史絵巻」(吉海直人)とも言える小倉百人一首の魅力を、端的に表現している惹句でもあります。

藤原定家は、いってみれば自身が生きた平安末期ー鎌倉初期に、それまでの約550年間におよぶ王朝和歌文学を取りまとめて「切符」として小倉百一首を編纂し、それを受け取った末次先生が、現代において『ちはやふる』とこの「創作ノート」として取りまとめて、わたしたちへ再び手渡してくれているわけですね。

わたしたちは、たまたまこの令和の時代に生きているわけですが、小倉百人一首のような古典文学作品を知ると、「流れゆく歴史の一部に立っている」ということが実感できます。わたしたちが生まれる遥か以前にも、人は恋に悩み、政治に翻弄され、季節の移ろいに感動してきました。過去に生きた人たちがそれを伝え、わたしたちもまた、後の世代へ伝えてつながってゆくわけですね。

やや話がドリフトしますが、現在放映中のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』は、京都で小倉百人一首が選ばれたのと同じ時代を舞台としています。ドラマの主人公である北条義時(西暦1163~1224年)と百人一首の選者である藤原定家(西暦1162~1241年)はわずか一歳違い。小倉百人一首、九十番台後半の歌人の多くが同時代人でもあります。

すでに登場が決まっている源実朝(鎌倉右大臣)や後鳥羽院に加えて、ぜひとも定家卿の出演を期待したいところです。

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