「プーチンの側近」がオーナーを務める軍事会社「ワグネル」の知られざる現実

所属する戦闘要員は2000人
廣瀬 陽子 プロフィール

驚くほど大規模な企業

ワグネルは、2014年に創設されたPMCであり、ロシアのPMCのなかでは最大規模を誇る。ワグネルは、ロシア・クラスノダール州のモリキノ村に訓練施設も持っており、明らかにロシア基盤のPMCだが、『プーチンも完全には制御できない? ロシア「民間軍事会社」の恐ろしい実態』で説明したようにロシアではPMCは非合法であるため、16年にアルゼンチン、18年には香港で登記をおこなっている。

ワグネル設立の契機となったのは2010年のサンクトペテルブルク経済フォーラムであったという。同フォーラムで講演した一人であった南アフリカの退役軍人、イーベン・バーロウは、アンゴラ内戦やシエラレオネ内戦で素晴らしい成果をあげたPMCであるエグゼクティブ・アウトカム社の設立者として有名な人物で、フォーラム参加の真の目的は、ロシア軍参謀本部との接触であったと言われる。バーロウはロシア版PMCの設立に関するアイデアを説明し、ロシア側の賛同を受けたようだ(注3)。

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ワグネルの前身は、ロシアのPMCのなかでは先駆的な位置づけとなる2013年に創設された香港を拠点とする「スラブ軍団(Slavonic Corps)」という組織である。同組織は、ロシアの総合警備会社「モラン・セキュリティ・グループ」が母体となっており、戦時下シリアで活動するために創設されたものである。

そして、ワグネルを創設したのが「スラブ軍団」に所属していたドミトリー・ウトキン(ロシア連邦軍参謀本部情報総局、通称GRUに属するスペツナズの元中佐だった人物)である。ウトキンは、退役後にプリゴジンの護衛を務め、そのまま側近となった(注4)。ウトキン自身は退役後に、早い時期からシリアで活躍していたことも知られている。

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