ライターの瀧本容子さんは、24歳のときにパニック障害を発症し、47歳の現在まで、統合失調症感情障害、睡眠障害、薬物依存症、摂食障害、アルコール依存症など14の精神疾患と闘ってきたという。
一方、韓国でイラストレーターとして活動するリ・ダンさんも21歳のときに双極性障害を発症し、以後、睡眠障害、パニック障害、不安障害、反社会性人格障害、アルコール依存症、PTSDなどの精神疾患に悩まされてきた。

二人は自らの経験をもとに、ほぼ同時期に本を出版している。瀧本さんは『アイアム精神疾患フルコース』、リ・ダンさんは『精神病の国から来ました』。そんな二人が、日本と韓国、それぞれの国における精神疾患患者の生きづらさについて語り合った。

瀧本容子
1974年、大阪生まれのカラダ張りまくり系実践ライター。20歳から大阪を拠点に一般情報誌の編プロや出版社勤務を経た後、フリーのライター・編集者に。27歳で東京に拠点を移し、サブカルチャー誌を主戦場に、潜入取材記事や体験ルポを積極的に寄稿。自身の経験を活かした精神病・精神薬・メンヘラネタから、文房具・教科書校正までマルチに手がける。著書に「アイアム精神疾患フルコース(彩図社)』


リ・ダン
2009年、イラストレーターとして活動開始。2015年冬からツイッターでうつ病をはじめとする精神疾患について発信を始め、 2016年5月に「女性精病ラー(精神疾患患者をを自嘲的に表現する言葉)自助会」を主宰。 2019年1月から6月までの精神疾患と関連文化を綴った「週刊リダン」をオンラインで発行。レズビアンであることを公表している。

インタビュー・構成:安宿緑(韓国心理学会所属、米国臨床心理学修士)

 

「精神疾患=頭がおかしい」という偏見

――お二人の症状について教えてください。

リ:21歳のときに発症した双極性障害1型が、今の私の主な疾患です。特徴としては季節性があり、一年に4回以上症状を経験しますが、幻覚症状、思考障害、妄想障害などです。PTSDが最近またできて、睡眠障害、パニック障害、不安障害もあります。現在は21錠の薬を飲んでいます。それに加えて、反社会性人格障害、アルコール依存症もある。新たな診断を受ける感覚は瀧本さんもよくご存じだと思います。

瀧本:そうですね(笑)。私もほとんど一緒です。私は24歳のときに発症した、パニック障害が発端でした。現在、特に大きいのは統合失調感情障害とパニック障害と残遺性障害で、合わせて14の疾病を経験しました。リさんと同じように薬物過剰摂取による幻視、幻聴も強い。それに加えて、膵臓癌の手術を終え経過観察中ですが、再発した場合の5年生存率は10%と言われています。

リ:私は、たくさんの種類の睡眠剤を服用しないと眠ることができません。そしてこれは睡眠というより、脱力して気絶するような状態を誘導する。何年もまともに寝ていません。私も精神疾患フルコースですね(笑)。睡眠薬や神経安定剤などがないと生活できないので、薬物中毒者と思われてしまうこともあります。