プーチンが「核兵器」を使用すると、中国・習近平まで“共倒れ”になりかねない理由

世界中から指弾される可能性

核のボタンを押しかねない…

ウクライナに侵攻したロシアの苦戦が伝えられるなか、悪夢のシナリオが現実味を帯びてきた。「追い詰められたプーチンは、核のボタンに手を伸ばすのではないか」という懸念が強まっているのだ。それを密かに期待している国もある。

多くの読者は、核の抑止力に関連して「相互確証破壊(MAD=Mutual Assured Destruction)」という言葉を聞いた覚えがあるだろう。

MADは「対立する核保有国のどちらか一方が、核兵器で攻撃すれば、相手も核で反撃し、双方が壊滅する。だから、核戦争は起きないし、起こせない」というロジックだ。実際、冷戦期に米国とソ連は核開発競争を続けたが、恐怖の均衡が保たれ、核戦争は起きなかった。

ロシアはいま、そんな前提の下で、ウクライナと戦っているのか、と言えば、実は違う。相互確証破壊の考え方は「双方が核保有国である」ことが出発点だ。だが、ウクライナは核を持っていないのだから、そもそも前提が異なっている。

では、ウラジーミル・プーチン大統領は「核の使用」について、どんな考えを持っているのか。

ロシアのプーチン大統領[Photo by gettyimages]
 

それは、大統領自身が2020年6月2日に署名した「核抑止力に関するロシア連邦の基本的原則」と題された大統領令に、明確に示されている。次のようだ。

〈この基本原則は、防衛を確保する分野における戦略的計画文書を表し、核抑止の本質に関する公式見解を反映し、核抑止の実行と原則、およびロシア連邦が核兵器を使用する条件によって無効化される軍事的リスクと脅威を特定する〉

〈核抑止に関するロシア連邦の国家政策は、連邦とその同盟国に対する侵略を防ぐための力と核抑止手段によって実施され、共通の設計で調整・統一された軍事、軍事技術、外交、経済、情報、その他の一連の措置からなる。核抑止力は、ロシア連邦とその同盟国に対する侵略が発生した場合に、潜在的な敵に対して、報復の必然性を理解させることを目的としている〉

〈核抑止の原則は次のとおり。a)国際的な武器管理コミットメントの遵守。b)核抑止を可能にする活動の継続性。c)軍事的脅威に対する核抑止の適応力。d)核抑止手段と軍事力を発動する規模、時間、場所に関する敵の予測不可能性。e)核抑止の確保に関与する連邦執行機関と組織活動に対する統制の集中化。f)任務達成に十分で、最小レベルの核抑止力維持。g)核抑止力と戦闘使用手段の恒久的準備〉

重要なのは、次の2つの部分だ。

〈ロシア連邦は、通常兵器の使用によって連邦が侵略され、国家の存続が危機に瀕するとき、または、連邦とその同盟国に対する核兵器、または他の大量破壊兵器の使用に対応するときは、核兵器を使用する権利を留保する。核兵器の使用は、ロシア連邦大統領が決定する〉

〈ロシア連邦による核兵器使用の可能性を特定する条件は、次のとおり。a)ロシア連邦とその同盟国の領土を攻撃する弾道ミサイルの発射に関する信頼できるデータの入手。b)ロシア連邦とその同盟国に対する敵の核兵器、またはその他の大量破壊兵器の使用。c)ロシア連邦の重要な政府、または軍事拠点に対する敵の攻撃、核兵器軍の対応を損なうような破壊活動。d)国家の存在そのものが危険にさらされるような通常兵器によるロシア連邦に対する攻撃〉

これでお分かりのように、ロシアは、敵が「(核兵器ではなく)通常兵器を使用した場合でも、国家が危機に瀕すれば、核で反撃する」方針なのだ。プーチン氏は開戦以来、何度も「核の使用」をちらつかせて、脅してきた。だが、それは戦争が始まってから決めた話ではない。開戦前から国家の政策として決定し、世界に公言していたのである。

 
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