「自分自身を元気づける言葉って案外大事」

――最初から設定されている4つの言葉はとてもシンプルで、読み進めていてもまったく違和感がありません。そして5つ目、ミウラさんが決めた言葉は、何か食べたり、素敵なものを見たり、何か嬉しい思いを共有できることが、どれほど心が温かく豊かになるかを感じました。

益田 コロナ禍で思うように人に会えない日々です。けれども、おいしいものや素敵なものを共有するのは違う形でもできます。先日、知り合いから「こんな展覧会に行ったよ」とミュージアムショップのポストカードが届きました。ちょっとだけ同じ絵を一緒に見た気分になりました。わたしは珍しいインドのお菓子を見つけたので送ったばかり。「一緒にいない時に思い出してくれたんだなぁ」と伝わるのは嬉しいものだし、「一緒にいなくても思い出してるよ」と伝えられることもまた幸せなことです。

(c)益田ミリ/マガジンハウス『ミウラさんの友達』
(c)益田ミリ/マガジンハウス『ミウラさんの友達』

――益田さんが漫画を描き続けていらして20年。振り返るといかがですか。

益田 自分が漫画を描くとは思ってもいませんでした。上京したのが20代半ば。急き立てられるような気持ちでとにかく出てきて。うまくいかなかったこともあったし、これからもあるんでしょう。でも失敗するたびにこう考えてきました。「ひとつのことで失敗したとしても、自分のすべてをダメとは思わない」。自分自身を元気づける言葉って案外大事なんだと思います。 

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言葉の大切さ、人間関係のもろさと、だからこその素晴らしさ。『ミウラさんの友達』はミウラさんの日常が、実はかなりドラマが起きているにも関わらず淡々と描かれる。「友達」に固執する必要はないけれど、生きていてだれかと言葉を交わしたり、喜びを共有したりすることの素晴らしさを改めて教えてもらえる。
よく飲みに行くような「友達」でなくても、誰かとあいさつを交わしたり、楽しさを共有するだけでも心が温かく豊かになることも感じる。

季節の変わり目で、多くの人が新しく出会いや別れを経験したことだろう。GWを超え、新しい生活に疲れたなと思う人もいるかもしれない。そんなときに『ミウラさんの友達』は、生きているからこそ知ることのできる光を感じられる、誰にでも寄り添う一冊になるのではないだろうか。

心が温かくなり、生きているって捨てたもんじゃないなと思わせてくれる一冊だ

文/FRaUweb 新町真弓