2022.05.08
# 格差・貧困

母親たちは、なぜ赤ん坊を殺したのか?法廷で語られた「地獄に落ちる瞬間」について

石井光太ルポ・乳児遺棄
石井 光太 プロフィール

ホスト依存と個人売春

真里はこのホストを彼氏だと思っていたが、実際はヒモだった。アパート代から食事代や洋服代まですべて支払わされ、さらにホストクラブに来て高い酒を注文するように求められた。

彼女は風俗店だけの収入では足りなくなり、出会いカフェに通って個人売春をはじめた。この時点で、彼女は「ホスト依存」になっていたのだろう。

ホストクラブで大金を費やしてチヤホヤされることにアイデンティティや生きがいを見いだし、破滅へと向かっているのに止められなくなる状態だ。近年はSNSにおける「投げ銭」にも同じ構造を見ることができる。

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そんな生活の中で、真里は妊娠していることに気づく。同棲相手のホストの子か、買春客の子かわからず、レディースクリニックで人工中絶手術を受けた。これを機に真里は彼氏とぶつかることが多くなり、お互いに浮気をくり返した挙句に同棲を解消する。

その後、彼女は金がなかったため、売春をしながら歌舞伎町のマンガ喫茶を転々とした。気がついた時には、相談できる友達も、家族もいなくなっていた。

公判で彼女は、当時の生活を次のように語った。

「泊まりのお客さんがいる時はラブホで寝て、そうじゃない時はマンガ喫茶で寝ていました。男性とセックスする時はコンドームをつけてもらっていましたが、向こうからつけないでやりたいって言われた時は特別料金をもらって受けていました。ピルは飲んでいませんでしたが、外に出してもらってました」

月に稼いでいたのは、30万円~60万円。がんばれば生活を立て直せるはずだったが、彼女はホスト依存から脱することができず、再びホストクラブに通いはじめる。

やがて真里は入れあげていたホストの一人と付き合うことになる。とはいえ、彼もまたヒモでしかなかった。真里は実家に住んでいると嘘をついて荷物をマンガ喫茶に置き、彼と毎晩のようにラブホテルで過ごした。むろん、その費用はすべて彼女の負担だ。

 

これではいくら稼いだところで、生活が安定するわけがない。マンガ喫茶だけで毎月10万円ほど、それ以外にラブホテル代や食事代や携帯代で月に50万円前後かかった。売春で稼いだ金はことごとく泡と消えた。

2度目の妊娠に気づいたのは、2017年の6月のことだった。激しい吐き気がつづいたことで、西新宿のレディースクリニックを受診したところ、医師からこう言われた。

「妊娠してます。今日で11週です」

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