合格した日にボコボコにされるなんて

何時間経ったかわからなかった。部屋はすっかり暗くなっていたし、鼻血も涙もカピカピに乾いていた。ゆっくり起き上がろうにも、あちこち痛みが走った。
両親が下の階で喧嘩をしている。なんだか、ご飯が作られていないということに父が文句を言っているようだ。「奈緒音は?」という父の声も聞こえる。「今日お姉ちゃん合格したよ」「なんで下りてきいひん?」と妹が話している。

妹が部屋に入って私の顔を見て仰天した。鼻血が出ていて、青痰ができていた。たぶん四谷怪談のお岩さんのような顔だったと思う。母からの暴力を私が受けているのを知っていた妹は、あとで食べ物を部屋に運んでくれた。

-AD-

父は、母が伝えていなかったので、この日が私の高校の推薦入試の合格発表の日だということすら知らなかった。兄の合格発表のときは毎日カウントダウンをしてお祝いをしたのに……。

どこの世界に、受験に合格したその日に母親にボコボコにされる子がいるのか。中学3年のとき、突然天国に旅立ってしまった同級生のことを思い出していた。お通夜や告別式の席で、息子のことを誇らしいと語っていたお母さんの言葉が眩しかった。彼が生きていたら、どの高校を受験しただろう? 彼ならどの志望校にも合格し、お母さんに褒められて、ごちそうを並べてお祝いしてもらえただろうな。そう想像したら、寂しくなって丸まってまた泣いた。

Photo by iStock

それから数週間、母は口を聞いてくれず、お昼代もテーブルにあったりなかったりした。私は食べるのは最小限にして貯金した。