大谷翔平、佐々木朗希の「真の力」を見抜く、革命的な理論「セイバーメトリクス」のスゴさ
野球を「感覚」で捉える時代は、終わりを迎えた。これまでの常識を覆す新理論が指し示すデータは、球界を背負って立つ大谷翔平、佐々木朗希という二人の若武者の真価をどのように導き出すのか。最新の指標をもとに検証する。
本塁打を46本打てた理由
野球界に「革命を起こした」と言われている理論があることをご存じだろうか。その名を「セイバーメトリクス」と言う。
統計学者・鳥越規央氏の『統計学が見つけた野球の真理 最先端のセイバーメトリクスが明らかにしたもの』(講談社)が3月に発売されてから、この理論に注目が集まっている。
元プロ野球選手で、引退後は楽天でチーム戦略室に在籍していた川井貴志氏はこう解説する。
「かつては『防御率が悪い=ダメな投手』だという認識が一般的でした。ただ、失点の背景には守備が悪かった可能性もある。一概に投手のせいだけとは言えないのです。本来なら守備陣の影響力を完全に除外した『投手の純粋な能力』を測らなくてはいけません。それを可能にしたのがセイバーメトリクスなんです」
セイバーメトリクスとは、野球を統計学的に解析して、選手の「真」の能力やチームへの貢献度を数値指標で示す分析手法だ。
たとえば、「QS(QualityStart)」という指標がある。「先発投手が6回以上登板し、かつ自責点3以内に抑える」ことができたかどうかを示す数値だ。先発登板数におけるQSを達成した比率を「QS率」と呼び、この数値で先発投手の能力を表すことができる。