2022.05.16
# ライフ

「子ども1人につき1500万円支給」がじつは合理的なワケ…イーロン・マスクも警鐘を鳴らす「少子化問題」解決策

田内 学 プロフィール

生き方の選択肢を増やす多様性の尊重

もう一つ、この少子化問題を語る上では、「生き方の選択肢を増やす」という視点を忘れてはいけないと思います。

2015年に国立社会保障・人口問題研究所が行った調査によると、「妻の年齢別に見た、理想の子どもを持たない理由」の第1位は、全世代を通じて「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」でした。30歳未満、30−34歳の女性の約8割が、この理由を選んでいます。

お金さえあれば、もっと子どもを産み育てたいと思っている人がこれだけいるのです。そして、少子化は社会全体で解決すべき課題になっています。子育て世帯への経済的支援を増やさない手はないでしょう。

実際にヨーロッパ諸国では、経済的支援を手厚くして人口減少を食い止めています。フランスの出生率は1.87人(2019年)に達し、ドイツも1990年半ばには1.24まで下がっていた出生率を1.54(2019年)にまで上げてきています。ドイツについては移民政策も同時に行なっていて、人口増に転じました。

日本も、史上最低だった2004年の1.26に比べると、2019年の1.36は、多少なりとも回復しています。しかし、政府の掲げる「希望出生率1.8」(希望出生率:若い世代の結婚や出産の希望がかなったときの出生率の水準)には程遠い状況です。ドイツのように移民政策をとるつもりがないのなら、先程のような思い切った経済的支援をするべきでしょう。

重要なのは、希望している人が子どもを産み育てられるようにすることです。子どもを産み育てない選択をした人たちや多様化するパートナーシップを否定することがあってはなりません。

「子どもを産み育てるという生き方を押し付ける」のではなく、経済的な理由であきらめている人たちに、「生き方の選択肢を増やす」という意味での少子化対策である必要があります。そういう意味で言うと、たとえば養子縁組によって子どもを育てる人に対しての経済的支援があってもいいと思います。

「子ども一人につき1500万円、3人目には家を支給」なんて馬鹿げていると批判する人もいるでしょう。失敗する理由を並べるのは簡単ですが、何もしなければ間もなく時間切れです。日本の体力は確実に衰えています。時間が経つほど、新しいことに挑戦する余力はなくなっていきます。

そして、この少子化の問題は「お金こそが社会を支えている」と勘違いしている人々への警鐘でもあります。人を育てることの重要さを改めて考え直す必要があります。

国立社会保障・人口問題研究所の発表している「日本の将来推計人口」の序文には、このように書かれています。

ただし将来推計人口とは、けっして確定した運命を示したものではない。それはこの社会がこれまで進んで来た方向に進み続けたときに帰結される人口の姿であり、将来推計人口とは真に実現したい社会と現状との距離を測るための測距儀にあたる。どちらの方向に進むかはわれわれに託されているのである。

どの未来を選択するかは、私たち次第です。

 
【第1部】「社会」は、あなたの財布の外にある。

第1話 なぜ、紙幣をコピーしてはいけないのか?
第2話 なぜ、家の外ではお金を使うのか?
第3話 価格があるのに、価値がないものは何か?
第4話 お金が偉いのか、働く人が偉いのか?

【第2部】「社会の財布」には外側がない。

第5話 預金が多い国がお金持ちとは言えないのはなぜか?
第6話 投資とギャンブルは何が違うのか?
第7話 経済が成長しないと生活は苦しくなるのか?

【第3部】社会全体の問題はお金で解決できない。

第8話 貿易黒字でも、生活が豊かにならないのはなぜか?
第9話 お金を印刷し過ぎるから、モノの価格が上がるのだろうか?
第10話 なぜ、大量に借金しても潰れない国があるのか?
最終話 未来のために、お金を増やす意味はあるのか?

おわりに 「僕たちの輪」はどうすれば広がるのか?
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