「宇宙が1つって、誰が決めた?」多様な世界の仮定から生まれた無数の宇宙の存在

解明に挑んだ科学者のアプローチ(2)

量子力学が真空のエネルギー密度に及ぼす効果と、真空のエネルギー密度の値に関する観測的事実との間の矛盾が生じ、そうした状況に対してアメリカの物理学者、スティーヴン・ワインバーグが解明を試みようとしたことについて、前編でお話ししました。

前編〈「加速膨張する宇宙のエネルギー」科学者たちも棚上げしようとした2つの矛盾〉https://gendai.ismedia.jp/articles/-/95150

後編では、ワインバーグのとった方法について、見ていきたいと思います。

ワインバーグと人間原理

真空のエネルギー密度の理論と観測との隔たりという問題について、多くの科学者が考えた解決策は、真空のエネルギー密度の理論値をゼロにしようとするものでしたが、そのどれもがうまくいっていませんでした。

こうした問題に対してスティーヴン・ワインバーグは、他の多くの物理学者たちが試みていなかったアプローチが必要であると考え、いくつかの先立つ研究者の示唆に従って「人間原理」と呼ばれる考えに注目したのです。

【写真】スティーヴン・ワインバーグスティーヴン・ワインバーグ photo by gettyimages

ワインバーグが注目した「人間原理」という考えの核心は、私たちが自らの周りで観測する世界よりも、実はもっと多様な世界がどこかに存在していると仮定することにあります。

人間原理と聞くと何か人間を中心とした新しい原理を導入しているように思う人も少なくないかもしれません。実際、そう思っている研究者すらいます。しかし、それは全くの誤解です。

以下で見ていくように、人間原理は、観測された事実を、宇宙(や宇宙たち)において人間(あるいは高等生命体)が特別な役割を果たすとすることなく説明しようとするする理論です。

コアとなるのは、人間が周囲を観測したときに特殊な環境(この場合、不自然に小さな真空のエネルギー密度)を見出すのは、ただ単に人間自体がそのような環境を必要とするまれな存在にすぎないからだという論理です。これは、人間の存在やその存在の可能性が物理学の法則に何らかの影響を与えるということではありません。

実際、このような現象は私たちの宇宙のうちでも至るところで見ることができます。例えば、地球の環境が高等生命体の存在に都合よく作られているように見えるのも、その一例です。

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