2022.05.20
# エンタメ # 映画

『ショーシャンク』『E.T.』『ローマの休日』…テレビの“洋画名作ブーム”の裏にある「意外な心変わり」

木村 隆志 プロフィール

名作であるほど誰かと一緒に見たい

まずふれておくべきは、映画というコンテンツを取り巻く現状。近年、「劇場公開後はレンタルやCS放送より、動画配信サービスで見る」ことが一般化し、より手軽に多くの映画を家で楽しめる状況になった。

言わば、「見たい人が見たい分だけ気軽に見られる」という映画好きには最高の状況なのだが、「面白いものや話題作だけ見たい」というライト層にとっては必ずしもそうとは言えない。

なかでも大きいのは、「楽しさや感動を共有しづらい」という動画配信サービスへの物足りなさ。SNS全盛の今、「自分一人でコンテンツを楽しむ」という行為には個人差や限界があり、かなりの映画好きでなければ、「誰かと共有せずに多くの作品を見続ける」ことは難しい。

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一方、地上波ゴールデン・プライムタイムの全国放送には、「数百万人もの人々と同じ映画を同じ時間に見て共有できる」という醍醐味がある。特に世界中の人々を楽しませた名作は、「いいものほど誰かと見たい。誰かと感動を共有したい」と感じる人が少なくない。

これまで『金曜ロードショー』が何度となくリピート放送しているジブリ映画はその最たるものであり、実際放送中はツイッターのトレンドランキングを席巻。地上波ゴールデン・プライムタイムでの全国放送が、「便利な動画配信サービスへの物足りなさ」や「一人で楽しむ自己満足への限界」に気づいた人々の受け皿になっているのだ。

また、動画配信サービスは自分で「見たいものを選べる」という自由ばかりフィーチャーされがちだが、「選ばなければいけない」という不自由さがあるのも事実。その点、地上波ゴールデン・プライムタイムで全国放送される映画には、「長年映画を放送し続けてきたテレビがレコメンドしてくれる」「歴史のある映画放送枠がそこまで勧めるのなら、本当に名作なのだろう」という安心感がある。

 

とりわけ若い層ほど、「失敗したくない」「時間を無駄にしたくない」という感覚が強く、「誰がどうレコメンドしたか」に敏感。その点、『金曜ロードショー』の「金曜リクエストロードショー」という視聴者参加企画は、これまで放送された『天使にラブ・ソングを…』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ、『E.T.』、『プラダを着た悪魔』などの実績があり、彼らの信頼を得られているのだろう。

この現象は、「便利になればすべてがOK」というわけではなく、「多少の制限があるから得られるものもある」という象徴的な事例の1つかもしれない。

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