2022.05.20
# エンタメ # 映画

『ショーシャンク』『E.T.』『ローマの休日』…テレビの“洋画名作ブーム”の裏にある「意外な心変わり」

木村 隆志 プロフィール

コロナ禍で映画へのハードルが上がった

もう1つ挙げておきたいのは、コロナ禍で「映画を見に行く」「動画配信サービスで映画にお金を使う」ことのハードルが上がったこと。

感染予防の観点から、“密閉された空間”という印象の強い映画館へ行くことの心理的なハードルが上がってしまったままだ。また、それ以前にいまだ外出自粛のムードを引きずっている人もいるだろう。

テレビ業界には、「恋人や友人と一緒に映画館へ行く」という行為の優先順位が下がったほか、「『チケット代や動画配信サービスの会費がもったいない』と映画にお金をかけることをためらう人が増えた」という見方もある。

そんな若年層にとって、地上波ゴールデン・プライムタイムで全国放送される映画を「無料で手軽に名作と出会えて、コロナ感染の不安がなく、SNSで盛り上がれる場」にしていきたいのだろう。

 

するとおのずと、「知られざる名作」より「多くの人々が知っている名作」を放送することになっていく。「わかっていても見たくなる」「定期的にあの感動を味わいたい」「SNSがある今だからこそ共有したい」という視聴者心理に沿った名作を選ぶのは自然な流れだ。

テレビ局にとっても、「世界の名作を後世に伝えていく」という文化面での大義に加えて、映画ファンへのサービスにもなり、引いては局と放送枠のイメージアップにつながり、もちろん制作・放送の手間や費用は抑えられる。

かつては「古い映画は視聴率が獲れないし、高齢層に偏りやすいからスポンサーが避けたがる」などと言われていたが、「選び抜かれた名作であればOK」という感覚に変わっているのだろう。

さらに『金曜ロードショー』で6月10日に放送される『ジュラシック・パークⅢ』(2001年公開)は、「最新作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』の公開記念」として選ばれた作品。このような形の放送も多く、「名作を楽しむ」という発想は世界の潮流であり、その影響もあるはずだ。

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