2年前、根っこにある情熱を見失いかけた

「いろんなお仕事に全力でぶつかりながら走ってきて、30代に入ったら、『あれ? 自分の意思や感情が、いろいろ絡まっちゃっているかも』と思ったんです」

2年と少し前、32歳の誕生日を目前にした倉科さんにインタビューしたときのことだ。憧れだった、タイトルロールを演じる舞台『お勢、断行』に出演する意気込みを語りながら、最後に、今の自分が抱えている課題のようなものに言及した。明るい口調の中に、人間なら誰しも抱える“揺れ”のようなものが陰影となって滲んだ。

2020年2月から上演することになっていた世田谷パブリックシアターでのインタビューだった 撮影/岸本絢
 

「20代の私は、お芝居で、正解をすぐに出そうとする癖がありました。それを私は、『全力で取り組めば、必ず瞬間最大風速が出せる』って前向きに捉えようとしていたんです(笑)。20代はずっと、『瞬発力を利用して最高のものを作ろう』とか、『間違えて、周りに迷惑をかけないように』とか、自分の中にあるいろんな課題を条件反射で乗り越えてきた。気づいたら、『あれ? ここは本当に自分が行きたかった場所なのかな?』と戸惑って……。『どうして仕事をしたいのか』『どういう役者になりたいのか』という、自分の根っこにあるはずの情熱を見失いかけてしまったんです」

その絡まってしまった情熱の紐を解いて行きたいと思っていた矢先、江戸川乱歩の迷宮世界を踏襲しながら、新たな物語の中で稀代の悪女・お勢を描く『お勢、断行』という舞台に挑戦することになった。会場となる世田谷パブリックシアターでは、2017年にも、劇作家/演出家の倉持裕さんが、江戸川乱歩のケレン味溢れた8本の短編を『お勢登場』という舞台に昇華させている。

舞台『お勢、断行』 撮影/細野晋司