満ち足りないから罪を犯す主人公に惹かれて

「舞台を観るのも出るのも大好きな私ですが、世田谷パブリックシアターは、劇場の雰囲気の良さはもちろん、そこで上演される作品を『絶対に面白い!』と確信できる、“間違いない”劇場です。そこで、大好きな倉持(裕)さんの舞台のお話がいただけるなんて! ちょうど江戸川乱歩の本を買って、読もうと思った2日後ぐらいにいただいたお話だったので、なんだか運命を感じました。前回の『お勢登場』は、客席から拝見していたんですが、私がお勢に感じている魅力は、女性ならではの満ち足りなさ。満ち足りないから、いろんな罪を犯してしまう。そこにすごく惹かれました。『その感覚、わかるな』って」

「大好きな劇場」と語る世田谷パブリックシアターにて、2019年12月 撮影/岸本絢
-AD-

舞台人らしい、よく通る声――。それが、話す内容によって、歌うようにリズムと音色を変えていく。少し声のトーンを落としてから、「どこか満ち足りないなという感覚は、女性なら誰もが持っているんじゃないですか」と、周りにいる女性スタッフを見回しながらそう言った。

「結婚したらしたで物足りない部分は出てくるでしょうし、独身は独身で自由で身軽だけれど、だからこそ孤独感に苛まれることもある。私も今まで、望んでいた何かが手に入った瞬間に、違う苦しさが生まれたような経験が何度かありました。大切なものを得れば、別の大切なものを失うし、重い荷物を下ろしたと思ったら、また違うものを背負う。物事にはいつもいい面と悪い面がついてくる。でも、それがわかっているからこそ、小さい頃から『なるようになるさ』と考えるタイプでした。目の前に起こることを、割と素直に受け入れてきた。だからなのかな。30になって色々変わった部分はあるはずなのに、その変化した自分にまだ適応できていない部分もあって……。来年は、ちゃんと自分を見つめつつ、お仕事に取り組めたらなと思っているんです」