コロナで全公演が中止に

そんなふうに話していたのが、2019年の12月。今回掲載されているロングヘアーの写真は、そのときに世田谷パブリックシアターで撮影したものだ。年が明けて2020年、新型コロナウィルス感染症の世界的な拡大により、2月末から上演されるはずだった『お勢、断行』は、初日を目前にして、全公演が中止になった。ゲネプロと呼ばれる本番さながらの通し稽古のあと、倉科さんは人目も憚らずに泣いた。悔しさと悲しさで、涙が溢れて止まらなかった。

「お稽古に入るまでの私は、俳優として生きていく上で、先の見えない長いトンネルに入っているような感覚でした。私の世代は個性的な女優さんが多いので、『人は人、私は私』とわかっていても、ふと、“自分にしかできないことは?”“私らしさって何?”みたいなことを考えて、こんがらがってしまっていた。そんな中、ようやく『お勢、断行』に没頭できて、光が見えそうになっていたのに、せっかくの作品をお客さんにお見せすることができなかったのが残念でしたし、悔しかったですね」

長いトンネルを抜けた、と笑顔でインタビューに答えたあとに公演が中止になってしまった 撮影/岸本絢
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そんな落ち込みのあと、緊急事態宣言の発令による「ひとり時間」で、少し仕事と距離を置けたことがよかったのだろうか。仕事が再開したとき、あらためて周囲のスタッフと、「こっちの方向で行きましょう」という明確な目標を設定することができた。

「映画『女たち』で演じた香織というキャラクターに合わせて、髪を40センチカットしたり……。翌年には舞台も2本――こまつ座さんの『雨』と、『ガラスの動物園』という作品に関わって、井上ひさしさんとテネシー・ウイリアムズの“言葉”に、いろんな場面で心を揺さぶられました。基本的に、目の前にあることを一生懸命やるというスタンスは変わっていないんですが、この2年の間に、長いトンネルを抜けたような感覚があります」

◇インタビュー後編「倉科カナが長いトンネルを抜け出て「無念を晴らした」道のり」では「長いトンネル」を抜けて、この悔しさを晴らすまでの道のりを伺っていく。

撮影/張溢文
倉科カナ(くらしな・かな)
1987年生まれ。熊本県出身。2005年、SMAティーンズオーディションでグランプリを獲得し芸能界入り。09年NHK連続テレビ小説「ウェルかめ」のに選ばれる。舞台への出演は、17年「誰か席に着いて」(作・演出:倉持裕)、19年「CHIMERICA チャイメリカ」、21年こまつ座「雨」(ともに演出:栗山民也)、「ガラスの動物園」(演出:上村聡史)など。「サスティな!〜こんなとこにもSDGs〜」(フジテレビ系)のMCを務めるほか、テレビ東京「寂しい丘で狩りをする」、NHK総合ドラマ10「正直不動産」に出演中。
撮影/山添雄彦
お勢、断行
江戸川乱歩「お勢登場」の世界観を踏襲したオリジナル戯曲。悪女・お勢(倉科カナ)が、財産目当ての謀略を巡る物語の中で暗躍する。福本莉子、江口のりこ、池谷のぶえ、大空ゆうひ、正名僕蔵、梶原善らも出演。公演中〜24日(火)世田谷パブリックシアター。兵庫・愛知・長野・福岡・島根公演あり。

(2022年)スタイリスト・道端亜未 ヘアメイク・草場妙子
(2019年)スタイリスト:多木成美(Cコーポレーション) ヘアメイク:野中真紀子(éclat)

ジャケット195,800円、スカート165,000円 、シューズ75,900円、ピアス(両耳)55,000円、ブレスレット(ご本人右腕) 129,800円 すべて/Patou(パトゥ)        
問い合わせ先 : IZA/イザ TEL:0120-135-015