フィリピン大統領選、マルコス元大統領長男圧勝で懸念される「暗黒時代」回帰

国民の対立と分断が深刻化する可能性も
大塚 智彦 プロフィール

「過去」を封印した選挙運動

ボンボン候補は選挙キャンペーンの期間中を通じて、コロナ感染防止対策の中で生じた物価の高騰、雇用の不安定化、さらに全国的な教育問題、インフラ整備などを重点課題として取り組む姿勢をアピールしてきた。

そしてマルコス元大統領の強権政治やマルコス一族の不正蓄財疑惑などへの追及を可能な限り回避するため、選管が主催した大統領選候補者による公開討論会は欠席し、記者会見もほとんど開催しなかった。

こうした選挙運動方針は、父親であるマルコス元大統領による戒厳令下の暗黒時代を肌感覚として知る年齢層や、人権・民主化運動などの活動家からは反発を招いた。

その一方で、都市部の若者層、貧困層、地方の農民層などからの「強いリーダーシップを持った指導者」への熱い思いを結集することに成功して多くの票を獲得したと分析されている。

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副大統領にはドゥテルテ氏の長女が当確

ボンボン政権の副大統領には、大統領選とは別に投票された副大統領選に出馬していたミンダナオ島ダバオ市の市長サラ・ドゥテルテ候補がボンボン候補同様に圧倒的な支持を獲得して当選確実となっている。

サラ候補は名前が示す通り現職ドゥテルテ大統領の長女であり、次期政権はマルコス元大統領の長男とドゥテルテ大統領の長女による正副大統領の誕生が確実となっている。

 

フィリピンの正副大統領はそれぞれ別個の投票で選出されるため、現在のフィリピン最大与党「ラバン」を支持母体としていたドゥテルテ大統領、野党自由党のレニー・ロブレド副大統領というペア誕生が可能なシステムとなっており、ドゥテルテ大統領の強権的政策にレニー・ロブレド副大統領はたびたび反対するなど政権内のバランスをある意味でとってきた。

しかしボンボ候補ンとサラ候補の正副大統領が誕生すれば「ドゥテルテ大統領の政策継承」で一致し、選挙運動でもしばしば共に地方遊説、登壇してその「親密さ」をアピールしてきただけに、新政権内で「異論抑止力」を期待するのは難しいとの見方が有力になっている。

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