「プーチン常勝神話」崩壊…ついに有力プロパガンディストも“現実”を認めはじめた

プーチンの時代は終わりに近づいている
北野 幸伯 プロフィール

プーチンのさえない「言い訳」演説

5月9日は、ロシアの対ドイツ戦勝記念日だ。これは、ロシアで最大の祝日である。

プーチンは、ここで勝利宣言をするのではないか? あるいは、戦争宣言をするのでは? など、さまざまな憶測がなされた。しかし、プーチンは5月9日、勝利宣言も戦争宣言もしなかった。

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なぜ、勝利宣言をしなかったのかといえば、「勝利していないから」だ。首都キーウを制圧できず、ルガンスク、ドネツクの戦いでも勝利していない。

なぜ、戦争宣言をしなかったのか? そもそも戦争宣言とは何か?

プーチンは、今回のウクライナ侵攻のことを、「戦争」ではなく、「特別軍事作戦」と呼んでいる。つまり、ロシアは現在、「戦争をしていない」のだ。

では、「戦争宣言」をするとどうなるのか? オフィシャルに戦争が開始されるだけではない。戦争宣言は、「動員令」とセットなのだ。つまり、18歳から50歳の男性が、ウクライナの戦場に送られる可能性が出てくる。

自宅でテレビを見ながら、「ロシア軍がんばれ!」と応援するのは簡単だ。しかし、自分や自分の父親、夫、子供たちが戦場に送られることを容認することは困難だ。

実際、ロシアでも若い層は、ネット経由で、ウクライナ戦争が国際社会でどう見られているのか知っている。それで若い世代の多くは、「プーチンのバカげた戦争のために死ねるか」と考えている。

「動員令が出て戦場に送られる前に逃げよう」と考え、ロシアから脱出するケースも多い。ちなみに、今年1月から3月、ロシアから脱出した人の数は388万人だという。

〈 ウクライナに侵攻中のロシアで、国民が国外に出る動きが急増している。独立系メディアが6日、連邦保安局(FSB)の統計として、今年1~3月に約388万人が国外に出たと伝えた 〉(朝日新聞DIGITAL 2022年5月6日)

 

プーチンは5月9日、国民の反発を恐れて、「戦争宣言」をすることができなかった。では、彼は、何を語ったのか? それは、「ウクライナを攻撃するしか選択肢がなかった」という「言い訳」だ。

〈 米国とその取り巻きの息がかかったネオナチ、バンデラ主義者との衝突は避けられないと、あらゆることが示唆していた。

繰り返すが、軍事インフラが配備され、何百人もの外国人顧問が動き始め、NATO加盟国から最新鋭の兵器が定期的に届けられる様子を、われわれは目の当たりにしていた。危険は日増しに高まっていた。

ロシアが行ったのは、侵略に備えた先制的な対応だ。それは必要で、タイミングを得た、唯一の正しい判断だった 〉

要するにプーチンは、「ウクライナがロシアへの侵略準備をしていたので、先手を打ってウクライナを攻撃した」と主張しているのだ。「歴史に残る大フェイク」といえるだろう。

しかし、ロシアに住むロシア人に聞くと、プーチン演説を信じている人が驚くほど多い。ある知人のロシア人ジャーナリストは、「国民のだいたい7割ぐらいは、プーチン演説の内容を信じている」と語っていた。

ロシアは、国際社会における情報戦で、完敗の様相だ。しかし、国内における情報戦においては、相変わらず有利な戦いをつづけている。

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