2022.05.26
# ビジネス

出世よりもバンドが大事!?…「課長昇進」の辞令に32歳営業主任が出した「意外な答え」

会社員にとって管理職への昇進は、おめでたいことのように思われがちだ。しかし、それが遠隔地への転勤をともなうもので、なおかつ給料が下がるとしたらどうだろう。

今回取り上げるのは、実際に「昇進拒否」をした会社員の事例だ。上司は「懲戒処分にする」と息巻くが、はたして法的に認められるのだろうか? 社会保険労務士の木村政美氏が、専門家の立場から解説する。

受けるべきか、断るべきか……

4月上旬。都内にある甲社で本社営業課に勤務するA宮さん(仮名=以下同、男性、32歳で営業主任・総合職)はB村営業課長(男性、40歳でA宮さんの上司。以下「B村課長」)から打診を受けた。

「A宮君、6月から福岡営業所の課長をやってもらいたいんだ」

「えっ?」

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「今年度の会社方針として、九州、四国、中国エリアの営業に力を入れることになったのは君も知っているよね?」

「はい。年頭の全体朝礼で社長が話してました」

「福岡営業所体制強化のために、現在の課長に変わって新規開拓営業に精通した優秀な社員を課長に据えることにしたが、C坂営業本部長(以下「C坂本部長」が君のこれまでの業績を見てぜひ新しい課長にしたいそうだ。いやーっ、これで出世街道まっしぐらだな。A宮か・ちょ・う! アハハ……」

急な話で状況が読めないA宮さんをよそに、部下が昇進することではしゃぎっぱなしのB村課長。これ以上話を続けるのは無理だと思ったので、その場を離れるとため息をついた。

「困ったな」

A宮さんは大学時代から地域のアマチュアバンドに加入、毎週1回の練習と月1回イベントやライブハウスで演奏活動をしていた。メンバーたちと好きな音楽をすることが最高のストレス解消法であり生きがいであったが、転勤で出来なくなると思うと気持ちが沈んだ。

その週の土曜日、A宮さんはイベント会場で演奏を終了し楽屋に集まったメンバーたちに、「実は今度福岡に転勤するんだ」と話を切り出した。

皆は驚き、口々にA宮さんの転勤を反対し大騒ぎになった。彼が欠けるとエレキギターを弾く人間がいなくなるからだ。

しばらくその様子を見ていたD崎リーダー(35歳。バンドのリーダーでベンチャー企業の乙社人事部長)が口を開いた。

「仕事が大事だから転勤は仕方がない。ところでA宮、課長になったら、給料は今までより大幅に上がるの?」

「課長になるんだからそれなりに給料は上がると思うけど……」

「それは怪しいな。自分もそうだけど管理職になると残業代が出ないんだよ。課長手当だってどれだけもらえるかわからないし。念のため会社に確認してみな」

「ああ、わかった」

「A宮が福岡に行ってもできる限りバンドに参加してもらいたい。毎週は無理でも隔週で戻って来いよ。でも福岡から東京じゃ往復交通費が結構かかるよね。だから給料がそれなりに上がらないと費用負担が厳しいんじゃないかな」

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