2022.05.26
# ビジネス

出世よりもバンドが大事!?…「課長昇進」の辞令に32歳営業主任が出した「意外な答え」

木村 政美 プロフィール

残業代ゼロ、手当はたった4万円

週明けの午後、B村課長は自席でPC作業中のA宮さんの肩を叩いた。

「昇進の件OKだよね? C坂本部長がその件で君と面談したいそうだ。私も同席するから行こう」

C坂本部長の説明によると、福岡営業所の課長は営業所長に次ぐナンバー2の立場であり、販売ルートの選定、商品販売額の値引き範囲など営業に関する権限があること、仕事の内容は新規営業先開拓だけではなく、30人いる部下のマネジメントや育成を行うことだと言う。

そして出退勤は業務に応じて臨機応変でかまわないが、当面は販路拡大により多忙のため月80時間の残業は覚悟してほしいと付け加えた。

A宮さんが昇進後の給料を尋ねると、課長の役職手当は3万円、遠隔地手当が1万円支給されるとのことだった。C坂本部長の話が終わったところでA宮さんが尋ねた。

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「残業や休日出勤は仕方がないと思いますが、その分残業代はもらえますか?」

「主任と違って課長は管理職ですから残業代は出ません」

C坂本部長の答えを聞いたA宮さんは、D崎リーダーの言葉を思い出し、課長になれば給料が大幅に増えると思っていた自分の考えが甘かったことに気づいた。

月80時間の残業代はA宮さんの給料で計算すると約20万円に相当する。昇進して月3万円の課長手当と1万円の遠隔地手当をもらっただけでは割に合わないし、月80時間も残業すれば2週間ごとの帰京も体力的に無理。自身のバンド活動は休業状態になる。

A宮さんはきっぱりと言った。

「もしこの話を断ったらどうなりますか?」

C坂本部長とB村課長はキョトンとした表情でお互いの顔を見合わせた。まさか出世できるチャンスを棒に振るとは思っていなかったのだ。C坂本部長が理由を尋ねると、

「週末はアマチュアバンドで活動しているので都内を離れたくないですし、もし福岡に行くのであれば、仕事内容に合うように給料を上げてほしいです」

「給料は就業規則で決まっているのでA宮君だけ特別扱いはできない」

「それではこの話はお断りします。主任として今まで通り東京でがんばります」

慌てたB村課長はその場で考え直すよう説得したがA宮さんは首を振った。C坂本部長は顔を真っ赤にして言った。

「もういい! この話は無しだ。そのかわり君は業務命令に背いたわけだから懲戒処分の対象だ。処分内容は後で伝えるから。わかった?」

A宮さんは黙って席を立ち、一礼するとその場を立ち去った。

はたして、C坂本部長が言うようにA宮さんは本当に懲戒処分になってしまうのか?

 後編記事〈バンド活動優先で「課長昇進」を拒否した32歳営業主任、会社は「懲戒処分」にできるのか?〉では、A宮さんのように昇進したくない人が増えている事情や、昇進を拒んだ人にはどのような処遇がなされるのか、詳述する。

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