新生児医療の現場でも進む「ACP」
そういう重篤な疾患を持った子供の終末期医療に関しては、以前は施設や医療者によって対応がバラバラだった時代がありました。
そこで日本小児科学会は2012 年に子供の尊厳や最善の利益といった子供の権利条約の基本精神を踏まえ、重篤な疾患を持った子どもの生命維持に関わる治療の差し控えや中止を含めた、治療方針の決定に関する話し合いのためのガイドラインを作成しました(※5)。ガイドラインの詳細は文字数の件で避けますが、医療者と家族の間で十分な情報提供や話し合いが行われるようにチェックリストを設けながら進めていくものです。
また、2019年にお笑い芸人を起用したポスターが炎上した案件で、「人生会議」という言葉が有名になったのも記憶にあると思いますが、医療界では「アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Plannning: ACP) 」というプロセスを進めようという動きがあります。ACPとは 将来の変化に備え、将来の医療およびケアについて、本人を主体に、家族や近しい人、医療チームが繰り返し話し合いを行い、本人による意思決定を支援するプロセスの事をいいます(※6)。
ACPの効果を裏付けるエビデンスも出ています。成人領域ですが、非小細胞癌の患者さん151名を対象にしたランダム化比較試験で、早期に緩和ケアを導入した群の方が導入しなかった群に比べて生活の質も高く、うつ状態の人が少なく、さらには寿命も有意に伸びたとの報告もあります(※7)。
当然赤ちゃんは自分の意志を話せないので本人の意見を聞ける訳ではないですが、赤ちゃんやご家族のために、新生児医療の現場でもACPは進めていこうというのが最近の流れです。
