ロシアの「プロパガンダ」から「営業活動」まで…一般人には見破ることができない「ディープフェイク」のヤバさ
ロシア政府が行った「偽情報キャンペーン」
2022年5月1日、英国の外務・英連邦・開発省(Foreign, Commonwealth & Development Office)から、1本のプレスリリースが発表された。それはロシア政府がネット上で行っているプロパガンダ活動に関するもので、英政府が出資した調査の結果、大規模な「偽情報キャンペーン」を行う組織の存在が確認されたと訴えている。
こうした活動について、英デジタル・文化・メディア・スポーツ省のナディーン・ドリーズ大臣は、「ウクライナ国民に加えている残虐行為について世界を欺こうとする、プーチンと彼のプロパガンダ・マシンによる狡猾な企て」であると非難している。
ドリーズ大臣が「狡猾」と表現したように、いまやネット上で行われる詐欺的行為は、巧妙化する一方だ。そのひとつが、AI(人工知能)に精巧なフェイク画像を作らせるという、いわゆる「ディープフェイク」を活用したものである。

たとえばロシアによるウクライナ侵攻をめぐっては、大手SNSのフェイスブック上において、本当の人間にしか見えない顔写真(実際にはAIが生成した偽画像)をプロフィール画像に設定した、ロシア寄りの発言を行う偽アカウントが多数存在していたことが発覚している(関連記事)。こうしたアカウントを通じて、西側にもロシアを支持する声があるかのように装っていたわけだ。
確かにディープフェイクはやっかいだが、これは戦争という異常事態の中での話で、私たちの日常生活とは関係ない――そう感じただろうか?
だとしたら、少し注意が必要かもしれない。実は個人を対象とした、「ディープフェイク詐欺」とも呼べるような活動が行われていることが明らかになっているのだ。舞台はビジネスSNSとして世界中にユーザーを抱える、リンクトイン(LinkedIn)である。