2022.06.04

哲学者・千葉雅也が語る、「哲学・思想」と「自己啓発・ライフハック」の意外な関係

現代思想入門』(講談社現代新書)が9万部を超えるヒットとなっている。哲学を扱った書籍としては、異例のヒットだ。難解な現代思想を読み解き、実生活についてのヒントもくれるという感想が多く寄せられている本書。著者である哲学者の千葉雅也氏に、本書との関連で「わかりやすさ」や「ライフハック」などについて聞いた。

 

「わかりやすさ/わかりにくさ」の脱構築

――インターネットなどで『現代思想入門』の感想を見ていると、「内容は難しいのにわかりやすい」という声が多く見られます。一方で、本書で展開される、現代思想の読み方の解説に触れていると、そもそも「わかりやすい」「わかりにくい」ってどういうことなのか? ということについて再考させられる瞬間もありました。

まずは『現代思想入門』について、「わかりやすい本をつくった」という意識があったか、また、「わかりやすさ」についてどう考えているのかをおしえてください。

千葉 その点はちょっと複雑で、『現代思想入門』は、「わかりにくい哲学のテクストを積極的に読んでもらうためのわかりやすいガイド」を目指したものです。僕自身は、世の中には「わかりにくくて価値が高いもの」が存在すると強く思っていますが、一方で、わかりにくさと付き合うためには、わかりやすく書くことも重要であるわけです。

そう考えると、そもそも「わかりやすさ/わかりにくさ」という対立を作り上げて、そこに一貫性を求めること自体、つまらないと感じませんか? 『現代思想入門』のなかでは、「自然/文化」のような二つの項目が対立する「二項対立」という状態を揺るがすこと(脱構築)について詳しく書いていますが、この本自体がこうして、「わかりやすい/わかりにくい」の二項対立を脱構築するような効果があると言えるかもしれません。

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