給料はなぜ電子マネーではなく毎月現金か振り込みで処理されるように法律で決められているのか? もっと瞬時に振り込まれる方法はあるのか?
ビットコイン、ブロックチェーン、NFT、Web3、メタバース……いまさら聞けない「お金の現在地と未来」についての入門書『お金の未来』で語られる「給料日」という概念が消える日――。
仕事が終わったらすぐに給料が振り込まれる
ジェリー いま、従来の金融機能の分散型バージョンが次々と出てきています。
預金、貸借、ファンド、デリバティブ、保険、仕組債、特典……従来の金融システムに存在したものの分散型バージョンが作られていますし、存在しなかったようなサービスも無限に生まれていっています。
DeFi(分散型金融)はコードを書けばそのまま分散型アプリになりますし、人々が実際に使いたいかは別として、自分が想像するものを自由に実現できるわけです。
山本 普通の生活者でも使いたくなるようなサービスもありますか?
ジェリー おもしろいケースでは、「Superfluid」というサービスは、お金の流れに革命をもたらそうとしています。
給料を例にとると、毎月末に経理チームが台帳を締めて、翌月に労働者に給料を支払うといった流れがありますよね。つまり、労働と同時に給料は入ってくるわけではなく、1ヵ月くらいのタイムラグがあります。これでは──めったにありませんが──悪質な企業・経営者が給料を払わないで逃げるということもできてしまうわけです。
そこで、Superfluidは働いた秒ごとにお金の残高が更新されるサービスを提供しています。
私が今日30分働いたとしたら、働き終わったタイミングで、すぐにその給料を使うことができます。つまり、これまで当たり前に存在した「給料日」の概念が将来的になくなる可能性もあるのです。「お金のストリーミング化」とでも表現できるようなリアルタイム決済、着金のタイムラグがない仕組みが生まれつつあるということです。
山本 銀行はキャッシュがあるといっても、預金を元手に貸し付けをすることによる信用創造で実際の預金額より何倍も多くの経済効果を作り出して金融システムを支えています。ただ、そのお金の回転速度が理想的に速いわけではありません。
また、クレジットカードでは、着金のタイムラグが1週間~1ヵ月くらいありますが、ストリーミングであれば決済してからお金が届くまでに早くて1秒単位で実現してしまうわけで、既存の金融システムではできないことです。