2022.06.06

「タピる」「わかりみ」「よき」若者言葉の作られ方ある“法則性”…あなたにはわかりますか?

「タピる」「わかりみ」など毎年新しく登場しては年長世代を戸惑わせる若者言葉だが、その作られ方に法則性があることを、90年代から近年に至るまで実際の会話を記録するなどして実証的に示した堀尾佳以『若者言葉の研究 SNS時代の言語変化』(九州大学出版会)が刊行された。宇都宮大学工学部留学生担当専任講師の堀尾佳以氏に、社会言語学から見た若者言葉について訊いた。

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動詞化「-る」は、明治時代から確認できる!?

――堀尾さんは若者言葉の普遍性(法則性)を大きく「語彙の拡大」と「意味変化」とまとめています。「語彙の拡大」の方法論としてはたとえばディスる、しくる、トラブるなど「ーる」というかたちの動詞化、あいまいさ、ワイルドさ、など「ーさ」というかたちの名詞化「ーさ」、そして近年出てきたものとして「わかりみ」「バブみ」といった「ーみ」で終わる名詞化がある。一方「意味変化」のほうは「クソ○○」「ゲロ○○」「大人○○」などの「その言葉のもとの意味とは異なる使い方」をするもの、として整理しています。

新語は若い世代が作り出し、上の世代は付いていけないと思いがちですが、堀尾さんは「造語法自体は下の世代へと連綿と受け継がれている」と指摘されていて、非常に興味深く感じました。

堀尾 過去にも米川明彦先生が「若者語には法則性がある」ということを書かれていましたが、私の博士論文を元にした今回の著作では、実際にかなりの数の資料を集めて「こういう法則がある」と実証的に提示できました。

――「コピる」のような、若者言葉の新語としての「ーる」が増えたのは1990年代くらいからでしょうか。

堀尾 この「ーる」表現に関しては、私が学生時代にテレビの歌番組でSPEEDのHIROさんが「告る」という言葉を使っていたのを聞いてびっくりして卒論のテーマに選んだ、という経緯がありますが、実は古くは明治時代に夏目漱石が松山で高校教師をしていたときに「牛耳を執る」という表現を短くした「牛耳る」 という表現を初めて使ったという説があります。それに高校生が驚いて食いついた、と。ほかに古いものだとたとえば「ポシャる」が、山型の帽子の「シャッポ」がダメになることからできたものとしてあります。

ですから90年代以降に増えたとは言えるものの、掘っていくと昔からあり、かつては「外来語+る」で日本語に取り込んできたパターンが多かったとされています。
「ーる」がおもしろいのは、活用ができる点です。たとえば否定形にしたければ「コピらない」「告らない」にできますよね。私は留学生に日本語を教えているのですが、留学生からはこういう若者言葉に関しても「3つある動詞のグループのうち、どれですか?」と聞かれます。日本人は文法を考えなくても自然にできるけれども、外国人には活用の仕方が直感的にはわからないんですね。

――日本語ネイティブの外からの視点によって改めて特徴に気づける面もあると。

堀尾 そうですね。私が修士論文を書く際に、友人に会話の録音の協力をお願いしたら「でも私、若者言葉なんてしゃべってないよ」と言われたのですが、録ってみるとまあ出るわ出るわ(笑)。あとから本人に指摘したら本人も「こんなに使ってるの?」と驚いたくらいで、当事者ゆえに気付きづらいところはあると思います。

――2010年代に登場した若者言葉として「タピる」「スノる」「ファボる」「リムる」などがありますが、新しい流行りのものが出てきたらそれを動詞化するということでしょうか。

堀尾 「ーる」に限らず、自分たちの身近にあるおもしろいもの、よく使うものが新しい言葉になっていく傾向が強いですね。誰かを誘うときにも「タピオカ飲みに行こう」ではなく「タピろう」のほうが短く済みますし、独特の省略をした言葉は、年代が離れている人にはわからない内輪の符丁として機能します。「了解しました」が「りょ」になり「り」になる、というのが典型ですね。

ただし、メディアで取り上げられて年長世代が使うようになると、若者たちは離れていきます。

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