「仕事の神」が降りてきた
キャリアも何もすべて放り出して、息子を産んだ。かわいくてやさしくておもしろくて、賢い息子に育ってくれた。とても楽しく、しあわせだった。宝もののような、しあわせな思い出。次も女に生まれたら、息子を産んであげたい。たとえ寿命が15年だとしても。
夫は5年付き合って、令和婚して、1年結婚していた。夢のように、楽しい毎日。照れ屋だから、なかなか言わない「愛してる」といった言葉を、最後にたくさん言ってくれたね。次に生まれて出会ったら、きっとまた結婚しようね。

そんなふうに思っていたら、急に、仕事の神が降りてきた。
「仕事がしたい!」
強い衝撃。大きく強い衝動がからだじゅうから、ぐわーって出てきた。何だろう? この熱量は?
深く考える前に、体が動く。まずは主治医の診察の予約だ。どのくらいの仕事ならやっても大丈夫なのか聞かないとならない。難病だと、障害者雇用の対象になるかもしれない。即、役所に電話。障害者手帳を申請するための診断書を送ってもらう。先生に会うとき、持っていこう。へー、障害者雇用のための、「就労移行施設」というのがあるのか。タダでWordもExcelも教えてくれるという。しかも難病専門コースもある。なかなかいいではないか。わたしはExcelはオートサムしか知らないから嬉しい。お、見学できるのか。即、予約しよう。
こうして怒涛の勢いで、就職活動を始めた。明日はハローワークに行こう。難病専門の人がいるのだという。それは会いに行かなくちゃ!
私はものすごい勢いで、いろんなことを進めていった。仕事の神が降りてきてくれたおかげだ。
ここから私は「障害者雇用」の現実を、嫌というほど知っていくこととなる。

◇後編「息子と夫を看取ったあと、難病告知をされた53歳の私が「就職活動」を始めた話」では就職活動準備について詳しくお伝えしていく。