「カワイイ」デザインがフィルムカメラへと誘う
「SNSを自在に使いこなすデジタルネイティブたちの間で、フィルムカメラが流行っている」――そんな話題がメディアで報じられるようになってから、すでに6、7年ほどが経つ。
今や観光地や繁華街では古いフィルムカメラや「写ルンです」あるいは「チェキ」などのインスタントカメラを片手に歩く若者をよく見かけるようになった。また筆者が担当している写真専門学校で聞くと、半数以上の学生がフィルムカメラを所有していた。最近では、そんな若い愛好者のなかから中古カメラ店を開く人も相次いで現れてきた。
2017年2月に、東京日暮里に開店した三葉堂寫眞機店(みつばどうしゃしんきてん)もその一つだ。店長の稲田慎一郎氏は当時28歳。写真専門学校に在籍中で、じつは筆者のゼミ生でもあった。

もともとフィルムで作品を撮っていたが、最初に「仲間とともに中古カメラ店を開業するんです」と聞いた時はかなり心配した。しかし、開業から丸5年を経て今ではリピーターもしっかりと掴んでいる。その理由は、できるだけ良質のカメラを売るようにしているからだと言う。
「うちに来られるお客の多くがスマホや『写ルンです』しか使ったことのない、10代後半から30代です。その多くが、フィルムカメラの手間や不便さを楽しんでいます。
一般的にこの層によく売れるのは、1万円前後で買えるオートフォーカスのコンパクトカメラです。ただ、これは電子機構の部分が多く、故障すると修理ができません。それに対して、当店では私たちで修理できる機種だけを販売することで、信頼を得てきました。
数年前に比べても、中古カメラはどの機種もかなり値上がりしています。もう国内メーカーが製造している現行品がないので仕方ありません。ネットオークションなどで中古カメラの購買層は広がっている半面、流通しているモノの質は落ちているように思いますね」