2022.06.03

あなたのまわりにも?一見優秀だが実は主体性がない「いい子症候群」の若者たち

最近の若者はまじめで、素直、ハキハキしている「いい子」だと言われる。だが、少し突っ込んで付き合おうとすると意思疎通できている気がしない――そんなギャップを感じている企業人は多い。若者はいったい何を考えているのか?

「目立ちたくない」「理想は均等分配という究極の平等主義」「自分から提案することも、ましてや自分が決めることも大嫌い」「周りから浮いてしまうことばかり気にする」「“○○したい”ではなく“○○したくない”という思考が中心のリスク回避志向」といった若者の心性を活写した衝撃の書『先生、どうか皆の前でほめないで下さい いい子症候群の若者たち』(東洋経済新報社)を著した、モチベーションとイノベーションの研究者である金間大介・金沢大学融合研究域融合科学系教授に訊いた。

[PHOTO]iStock
 

「いい子症候群」とは何か?

――マイナビ2022年卒大学生就職意識調査を元にした金間先生の考察によると、現在の大学生の多くは「やりたい仕事」や「働きがい」を「安定」の対極にあるものと捉え、特に男子は「安定している会社」志向が強いそうですね。一方、企業が学生に求める資質・能力は、文系・理系学生ともに「主体性」「実行力」「課題設定・解決能力」であって、学生と企業側の求めるもののギャップが大きいと。

金間 今の10代後半~20代前半の世代は「社会貢献意欲が強く、アントレプレナーシップがあり、海外に興味がある」等々とメディアに登場するような若者を例に捉えられることがあります。ただそれは一部の目立つ層だけであって、体感的には半分くらいは私が「いい子症候群」と呼ぶような、社会変革とはほど遠い人たちです。

彼ら/彼女たちは一見すると優秀でコミュ力もあってプレゼンもできるし協調性もある。けれども80点以上のことはしないし、年長世代が何か指示するまでは考えないし動かない。非常に横並び意識が強く、ひとりだけ外れたり目立ったりすることを避ける。何か任せようとするとさーっと引いていきます。

こういう「いい子症候群」の若者の学力は、中の中から上の下くらい、偏差値で言えば50~60くらいがボリュームゾーンでしょうね。演技ができ、指示が出たら対応できる能力がないと平均には行けません。それより下は求められたことに対して80点で返せない。逆に偏差値65以上、東大レベルになるとZ世代の中でも外れ値ですから、横並びどころかスタートアップをやるような若者の割合が増えるという印象です。

しかしですね、そもそも企業は「自分で動いてくれる子が欲しい」と思い、若者のマジョリティは「安定」を求める、と対極的に理解するべきではなくて、若者は企業の本音を見透かしていると見たほうがいいと思います。

――というと?

金間 企業は「主体性」「チャレンジ精神」を求めると言うけれども、実際にはそれに加えて「自分たちの言うことは否定せず、こちらの決めたルール内で」チャレンジしてほしい、と思っています。つまり、本当に破壊的イノベーションを起こしてくれる人ではなく、前例を踏襲しながら限定的に主体性を発揮してくれる人がいいわけです。表立っては言わないけれども、若者はそれを見抜いています。

採用サイトや説明会では「うちの企業は自由です。フレックスも導入しています」などと言うけれども、質疑で「じゃあ年に3回しかオフィスに行かなくてもいいんですか」と聞いてくるような学生は落とされるわけです。企業も若者もお互いそれをわかった上で演技しあっているわけです。

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