2022.06.06

無謀な「学校統廃合」がすべてを“破壊”した…教育の現場で起きていた恐ろしい実態

これはまさしく「暴力」だ

関係人口とは何か?

「「理想の学び」から離れていく…学校統廃合を強行する行政の「無理なロジック」」などで報告をつづけてきた広島県福山市の学校統廃合。さらに報告をつづけなければならない。今回は「関係人口」から始めたい。

地方創生の柱事業の一つとして「関係人口」創出事業が進められている。

「関係人口」創出事業は、「関係人口」論にもとづく総務省の事業である。

その元をたどれば、熊本大学名誉教授・徳野貞雄氏が主張した、「集落はそこに住んでいる人だけで成り立っているのではない。集落から外に出た人たち(他出子)が、通ったり、何らかの形で関わっていることで維持されている。過疎高齢化が進んでも集落が維持されるのはそのためである」という議論にたどりつく(拙著『限界集落の真実』ちくま新書も参照)。

集落には、この議論で想定しているその地の出身者以外にも、仕事や何らかの縁で関わる人がいる。

そうした人々を、観光などでその地に来るだけの「交流人口」よりも、関わりの深い「関係人口」と名付けて可視化しよう(田中輝美『関係人口の社会学』大阪大学出版会など参照)。

“いま住んではいないが関わっている人”に注目し、そうした人にむけた事業を行うことで、過疎地への新たな視角が生まれるのではないか。

そしてそもそも、人はいきなり関係のないところに移住するものではないのだから、こうした関係人口の中からUターンやIターンも行われ、「定住人口」に転換するはずである。これが「関係人口」創出事業の本旨である。

Photo by iStock
 

不登校と関係人口の関わり

さて、広島県福山市で強行された学校統廃合だが、これらの小規模校では実は、様々な事情で自宅がある学区の学校に通えなくなった児童生徒が、学区を越えて小規模校に通学することで、ふつうの学校にふつうにいける状況が見られていた。

筆者も当時はよく分からずにいたが、目をこらすと、東京都近辺などにもそうした学校がちらほら見られる現象である。

大規模校では馴染めない生徒が、小規模校だとふつうに通えるようになる。これはもはや一般的な状況のようだ。

考えてみれば、人口密度の高さは人の暮らしにとって決して望ましいものではなく、それを敏感に感じ取って敬遠するのは本人の弱さではない。

不登校対応に関わる国の重要な法律、「教育機会確保法」(義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律)でもそうした観点から、子供たちの教育環境をしっかり確保するよう説いていることもこれまでの記事で示してきた。

さて、ここでこのことに触れたのは、福山市内で小規模校を抱える地域にとって、こうしたかたちで地元の学校に通い、地域を元気づけてくれる生徒や親たちこそ、重要かつ大切な関係人口だからである。

学校を起点にした関係人口の創出。それが福山市内の過疎地域がこの数年目指し、かつ着実に実現してきたことだった。

今見たように関係人口は、そこから定住へと発展することもあり、事実、この福山市でもそうした展開が始まっていた矢先の統廃合であった。

関係人口が地方移住者へつながる

福山市はこうした地域の学校を、生徒数が少ないという数の論理で閉校にした(する)。

その工程を指揮した枝廣直幹・福山市長は当時、その地域の一つに対し、次のように説明している。

「人口減少,高齢化の進展という中にあって,今までと同じ状況が維持できれば,今までと同じように地域が元気を維持できるかといえばそうではないと思う。今までと違ったやり方を考えていかないと, 地域の新しい活力の作り方は見えてこないと思う。【市長と車座トーク、山野、2017 年 8 月 21 日】

さて、この「今までとは違ったやり方」として福山市が採用したものが、冒頭に示した「関係人口」創出事業であった。だがそこではどうにも不可解なことが展開してしまったようである。

2018年4月、福山市は「地域振興に向けた総合調整機能の強化」のため、新たに地域活性化担当部長を企画政策部に配置した。この地域活性化担当部局はさっそく5月より、市内の過疎地に対し、地方創生の目玉事業ともいえる「「関係人口」創出事業」を取り入れ、その実施を進めた。

当時の福山市の資料には次のように記されている。    

(事業の目的)現在、本市の山間部及び島しょ部を始めとする多くの地域において、住民の高齢化等による地域活動の担い手不足など地域コミュニティの維持が危ぶまれている。本事業では持続可能な地域コミュニティの確立や活力ある地域の創生につなげるため、新たな切り口で地域づくりを提案・実施できる外部人材と福山市立大学(以下「地元大学」という。)が連携した地域活性化策に取り組む。これらにより、地域に継続的に関わる若者や外部人材の増加など関係人口の創出につなげていく。【「関係人口」創出事業モデル概要、2018年5月16日】

その事業の実施場所として、当時、学校統廃合に強く反対していた山間部の山野地区と、島嶼部の内海地区の2カ所が選ばれたという。

これまで見てきたように、学校統廃合に反対する両地域に対し、福山市の進め方はきわめて強引であり、とくに内海地区では横暴ともいえるものだった。

これらの地域に取り付けたこの事業についても同様に、異様な展開を見せることになる。不登校と小規模校の関係を中心に、ここでは山野地区の顛末についてレポートする。

SPONSORED